昔見た、懐かしい絵。
      俺達が描いた失敗作。



















      残酷


















      凄く、凄く凄く好きだよ。


      例えば明日世界が終わるとする。
      何をするって聞かれたら、だけでも助かる方法を探すって答えるよ。
      俺が死んだって、が生きててくれればそれで良い。
      

      例えばが心臓病で、移植しなきゃ明日死ぬとする。
      そうなったら、俺、迷わず自分の心臓差し出すよ。
      俺の心臓じゃ合わないんだったら、合う奴見つける。
      俺が殺して持って来てあげる。
      のためなら俺、犯罪者になったって良いよ。

  
      を傷つけるものは俺が全部排除してあげる。
      俺さ、に幸せであってほしいんだ。
      その為だったら何だってするよ。
      その為だったら俺は死んだって構わないよ。
      

      死んだってずっと見守っててあげる。
      だってずっと俺と一緒にいたいでしょ?
      大丈夫、俺、死んだらの守護霊になれるよ。
      だって俺達、こんなに愛し合ってるんだもん。
      俺が死んだって離れられるわけない。
      

      ずっと、ずっと一緒だよ。


























      俺、今だってそう思ってるから。



































      ある日の仕事帰り。
      少し遅くなっちゃったし、にお土産でも買って帰ろうと思った。
      だから途中で車を降りてそこから歩き。
      の大好きなアップルティーでも買って帰ろうかと思って。
      とりあえず好みの可愛い店を探した。


      そのとき見ちゃったんだ。


      レンガ造りの落ち着いた感じの店。
      大きな硝子越しに見つけたのは、俺を送り出してくれた時とは違う服の
      反対側から茶色いオシャレなテーブルを挟んでるのは・・・誰?
      見たこともない金髪の男。
      

      無駄に明るい街がムカツク。
      車のクラクションがウルサイ。
      なんでこんな時間に開いてるカフェがあんだよ。
      なんでこんな処にカフェがあんだよ。


      なんでこんな処にがいんだよ。


      金髪の男は趣味の悪い黒いバックから、小さな黒い箱を取り出した。
      その箱を見た途端、の表情が明るくなる。
      何やってんだ、こいつ等。
      何やってんだよ、
      俺以外の男からプレゼント貰うの?
      俺以外の男からプレゼントなんか貰って、そんなに嬉しいの?
      そんな嬉しそうな顔してんなよ。


      金髪の男がおもむろにその小さな箱を開いた。
      それを見ては有り得ないくらい喜んでる。
      男は照れたように笑ってる。
      それはよく昼ドラなんかで見る光景。


      中身は・・・指輪・・・?


      遠くからじゃよく見えない。
      だけど鈍く光るシルバーの指輪に見える。
      よく小説とかであるよな。
      夜中にオシャレなカフェに呼び出して指輪渡すの。
      んで、指輪渡した男は十中八九こう言うんだ。
      結婚しよう、ってね。


  




      俺は急いでその場を離れて家へ帰った。
      何で俺が逃げるような真似しなきゃいけねぇんだって思った。
      でも、それはがすげぇ嬉しそうな顔してたから。
      俺といるときよりずっと嬉しそうな顔してたから。
      

      頭混乱してて、どーしたら良いか解んねぇよ。
      その男は誰?
      いつの間にそんな話になった?
      は俺の彼女じゃねぇの?
      それとも俺を好きだって言ったのは嘘?
      俺はお遊び程度だったってこと?
      俺、に何か悪いことした?
      解んねぇよ。



      なぁ・・・俺、どうしたら良い?
      が幸せであれば良いって思ってたけどさ、こんなんじゃねぇよ。
      俺がの為に出来ることって何?
      別れてやることしか出来ねぇの?
      何か違う、こんなんじゃねぇよ。
      

      が幸せであること。
      それは俺によってのものだってのが前提であるわけで。
      俺さ、の為なら何だって出来ると思ってる。
      だけどこんなことじゃねぇんだよ。
      


      






      こんな場面、見たくなんかなかった。
      史上最悪のシーン。  
      俺にとっては残酷でしかない。










      がいるはずの無い部屋に一人で帰る。
      返ってこない返事を求めて、ただいま、って言ってみる。
      虚しさと一緒に沸きあがる感情。
      それは嫉妬みたいにどす黒い感情じゃない。
      もっと透明な・・・心のずっと深い場所から溢れるものみたいで。
      俺はなんとなく目を閉じた。
      


  
      暗闇の中で、静かにドアが開く音がした。




























      最初は喉笛を掻っ切ってやった。
      これ以上、言い訳なんて聞きたくないから。



























      「今日・・・ずっとあの男と一緒にいたの?」


      「え?あの男・・・?」


      「とぼけるの?付き合ってんだろ、あの男と!」


      「と、敏弥?話が見えないよ・・・」


      「まだ嘘吐くんだ?指輪まで貰ったくせして」


      「指輪?・・・もしかして敏弥・・・」


      「あ、見られちゃマズかった?そりゃそうだよな、一応浮気現場だし」


      「何言って・・・ッ!浮気なんかじゃないよ!だってアレは・・・!」


      「何?言い訳?女ってそういうの得意だしね」



      嫌な言葉ばっかり選んでる。
      が傷つけば良いと思ってる自分がいる。
      

      でも可哀相なのはじゃない、俺。
      俺はをこんなに愛してるのに。
      だって俺を愛してたはずなのに。
      ほら、裏切られたのは、俺。


     
      どうしてそんな泣きそうな顔してんの?
      あぁ、自分が可哀相だって勘違いしてんのかな?
      のそういうとこも可愛いと思うよ。
      

      
      「敏弥、話聞いて?」


      「別れ話を?」


      「違うよッ!だってあの指輪はとし・・・」


      「俺と別れる為の口実?」


      「敏弥!話を聞いてってば!」


      「あんな男と夜中に二人っきりでいて!しかも指輪貰って喜んで!
       これ見てどんな話聞けっつーんだよ!!」



      




      なぁ、俺さ、のことすっげぇ好きだよ。
      きっとが思ってるよりずっと、俺はが好き。
      大切なんだ。
      壊したくないんだ。
      傍にいてよ、ずっと傍にいてよ。
      お願いだからさ、これ以上壊さないで。





  
    
   
      「敏弥・・・やだ・・・やめてよ・・・ね?」


      「・・・愛してるよ・・・」


      「やだ・・・ぃやぁぁ!!!」




 



      最初は喉笛を掻っ切ってやった。
      これ以上言い訳なんて聞きたくなかったから。

    
      好きだから、大切だから。
      の口から出る言葉で壊したくねぇの。
      だからもう何も喋んなよ。
      頼むからさ・・・


      真っ白な壁際まで追い詰めて、頭を押さえてそのまま深くカッターを差し込んだ。
      白く脂肪が見えたと思った次の瞬間、真っ赤な血が噴出してきた。
      の身体が痙攣してるのが解る。
      

      目を開けたまま、世界が真っ赤に染まっていく。
      しか見えない、俺だけの世界。




      が持ってたバックが床に落ちる。
      真っ白なバックは見る影もねぇ。
      そのバックから転がり出てきたもの。
      俺がさっき見た指輪の箱。




      壊さないでって言ってんのに、どうしてこうタイミングが悪い?
      は刺さったまんまのカッターを押さえて床を這い蹲る。    
     


      「なぁ、その指輪さ、そんなに大切なもん?」


      「ッ・・・ぁ・・・ッ・・・・・!!」


      「そんなにあの男が好きだったんだ?」


     
      俺の方が、あんな男よりを愛してんのに。
      俺の方がずっとずっとを愛してあげれんのに。
      

      そんな指輪貰ったくらいで何だよ。
      俺が目の前にいんのにどうして他のもん見てんだよ。
      こんなに愛してるのに。
      こんなに愛してるのに。 
      こんなに愛してるのに。
















      昔、見たことがある。





















      そう、あの絵にそっくりなんだ。























      幼い頃に見た、残酷絵。
























      





      「・・・・・・・ッ!!!」



      指輪なんて嵌める必要ないよ。
      指輪を嵌める指なんか、俺が全部切り落としてあげる。
      細くて長い綺麗な指だね。
      腐るまでずっとこの部屋に飾っててあげるよ。
      指輪なんて、絶対に嵌めさせない。


      骨ってカッターじゃなかなか切れないんだね。
      ちょっと痛いかもしんないけど我慢してね。
      俺が綺麗に折ってあげるから。
      

      ほら、見て?この薬指。
      俺さ、いつかこの指に綺麗な結婚指輪嵌めてあげようと思ってたんだ。
      もう無理だけどね。
      でも心配しないで。
      この指は特別だから。
      ずっとこの部屋に飾っててあげるよ。


      
      「ねぇ・・・苦しい?」


      
   
      真っ赤に染まったに優しく問い掛ける。
      カッターが刺さったまんまの喉がヒューヒュー言ってる。
      ごめんなさいって言ってるのかな?
      それとも助けてって言ってるのかな?
      もしかして、あの男の名前を呼んでるの?
      

      俺はドロドロになったカッターを握りなおした。
      何度も何度もの喉に突き立てる。
      どこが喉なのかももう解んねぇ。
      骨に当たってカッターの刃が折れる。
      それでも俺は止めなかった。
      


      もうグチャグチャでドロドロ。
      何がなんだか解んねぇ。
      肉の塊みたいなのばっか飛んでくる。
      ほら、俺の右頬に付いてんの、これって肉片じゃねぇ?
      だってすっげぇ温かいもん。




      「ねぇ・・・苦しい?」



      ピクピク動くの手に握られた黒い箱。
      そんなに大事なんだ?
      


      「こんなのさっさと捨てちゃえよ」


      の手ごと箱を蹴り上げる。
      壁にぶつかって跳ね返ってきた中身。
















   
      やり直しは、何回まで有効ですか?























 
      誰か
























      誰か、嘘だって言って















      違う





















      あぁ、解った




















      これは絵なんだ





















      そうだよな、現実なわけねぇもん。
      これは俺が描いた絵の中の物語。
      俺が思い描いた残酷な物語。
      真っ白なキャンバスに赤い絵の具ばっかり使って描いた絵。
      赤しか使わなかったから、全部が真っ赤。
      真っ赤に描かれた、俺の世界。
      だから全て嘘なんだ。




      「・・・俺、本当に好きなんだ」




      失敗したから、また赤を重ねる。
      また失敗したから、また赤を重ねる。
      また巧くいかなくて、もう一回赤を重ねる。
      全てが赤に染まっていく。



      「嘘じゃねぇよ?ホントに愛してんだよ・・・」



      でも重ねすぎちゃってさ、もう赤にも見えねぇの。
      重ね過ぎた場所から、腐蝕は広がってく。
      何度も何度も重ね過ぎちゃって、真っ黒なんだ。 
      キャンバス全体が真っ黒になっちゃったんだ。
      赤しか使ってないはずなのに。



      「俺、お前がいねぇとダメなのにサ・・・」



      最初は少しだけで良かったんだ。
      パレットの端っこの方にだけ出すつもりだった。
      なのに力入れすぎたらいっぱい出てきて。
      俺、ダメなんだよね、こういうの。
      出したものは全部使い切らなきゃ気が済まねぇタイプ。
      だから赤から使い始めたんだ。



      「何やってんだろーな・・・馬鹿じゃん、俺・・・」



      だけどその赤ってのが思ったより多くてさ。
      なかなか使い切らねぇの。 
      で、意地になって赤ばっかり塗ったくってたんだ。
      俺、必死だったから、オカシイって事に気付かなくて。
      ホント馬鹿だよな。



      「、ごめんな・・・ごめん・・・」



      気付いたらキャンバスは真っ黒になっちゃってて。
      これさ、もっかい上から赤塗ったら、綺麗になるかな?
      綺麗な赤が見たいんだ。
      こんな濁った色じゃなくてさ、もっと綺麗なの。



      「愛してるよ、



      でも、もう赤の絵の具使い切っちゃったみたい。
      でももう一本新しいのがあるんだ。
      まだ全然使ってないやつ。
      綺麗な色だと良いな。
      ちょっと開けてみよっかな。




      「愛してるよ」



   











      あ、また力入れすぎちゃった。









      あーあ・・・全部出ちゃったじゃん。









      さっきよりどす黒いね。













      また失敗かぁ・・・・






















      『敏弥へ  探してた指輪見つけたよ!プレゼントだぁv  より』




























      真っ赤に染まった失敗作。
      俺達が描いた、残酷絵。























      BE HAPPY・・・?


      ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

      またしても微妙なもの書いちゃってすいませんすいませんすいませんすいm∞
      最後は敏弥が首切って自殺した・・・つもりなんです;
      展開が早くて内容が薄いですか、そーですか、はい。
      もっと精進します・゜・(ノД`)・゜・。

      
      少しでもお気に召しましたら、感想くださると嬉しいです!!




      20040609   未邑拝


      
      
      

   



      
      
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