別にお返し目当てじゃないし、期待してたわけじゃない。
      なのにこんなのって・・・困るよ。
      一生分だって言われたら、どうしようかなぁ。

















      Why― ―te


















      未読メール1件。
      「3/14 11時 俺んち集合」
      有り得ないくらい簡素で用件のみしか書かれてないメール。
      それでも嬉しくなるのは、送信者が敏弥だから。
      忙しい仕事の合間に急いでメールくれたんだろうなぁと思うと顔がニヤけちゃったり。
      今日は撮影かな、練習かななんて考えながらメールを打つ敏弥を思い浮かべた。
      皆に背を向けて部屋の一角で急いでメール打っててさ。
      薫くんに怒られたり、堕威くんにからかわれたり、心夜くんに冷ややかな目で見られたり。
      京くんに至っては敏弥に見向きもしなかったりして。
      そんな中で急いでメール打ってる敏弥がリアルに想像できた。
      





      タクシーに乗る事約20分。
      そんなに遠くないはずなのに、すっごく長く感じた。
      はやく敏弥に会いたくて堪んないからかな?
      私は何となくドキドキしながら、敏弥の部屋のインターホンを押した。
      聞き慣れた音が、ドア越しに響いてくる。
      ・・・なのに敏弥が出て来ない・・・





      「敏弥〜?いないの?」





      試しにドアに手をかけるとすんなり開いちゃって。
      彼氏とはいえ、他人様の家に勝手に入るのは気が引ける。
      こっそり覗き込んでみると、奥の方に淡く揺れる光発見。
      呼びかけてみるものの返事はなくて。
      私は、入るよ?と断って、背中越しにドアを閉めた。





      寝室から漏れる光を頼りにドアを開けてみる。
      淡いオレンジ色の光が充満する寝室はどこか幻想的で。
      奥の壁にくっ付けられたベッドには倒れ込むように敏弥が横たわっていた。
      自分からメールしといて寝てるってどうよ?
      ・・・疲れてんのかなぁ・・・仕事、大変なのかな・・・
      辛い事とか一人で溜め込んじゃう癖があるから、ちょっと心配。
      自虐的なとこがあるから、すごく心配。





      「・・・敏弥・・・?」





      「・・・・・・」





      「敏弥?・・・敏弥ってば!」





      「ぅん〜・・・・・・?」





      自分が呼んだんじゃん!
      私以外の人だったら怖いって!不法侵入じゃん。
      あ、私も変わんないんだけどさ・・・勝手に入っちゃったし。
      





      「ドア、開けっ放しだったよ?」





      「が来るから開けてたの〜・・・」





      「ん、ありがと。今日、どうかしたの?」





      「ん〜・・・だってさぁ・・・・」





      「何?何かあった?」





      「別に〜・・・ねぇ、こっち来て?」





      曖昧に言葉を濁すのは敏弥の癖。
      敏弥はベッドに寝転がったまま、手招きした。
      少し乱れた髪、眠そうな目、私を手招く綺麗な指。
      どれもいつもの敏弥とは違うような気がして・・・ドキドキする。
      ベッドの横まで来ると、私は振られている手にそっと触れた。
      その瞬間。





      「・・ッ!!と、敏弥ぁ?!」





      「イイじゃん、ちょっとだけ〜・・・・」





      腕を引かれたと思った時には、既にベッドの上で。
      敏弥の胸に顔を埋めるように抱きしめられた。
      抱き枕みたいに抱きかかえられて、身動きが取れないんだけど。
      あんまりきつく抱きしめるから、ちょっとだけ苦しいんだけど。
      離して欲しくないって思ってる自分がいるのも確か。
      敏弥の心臓の音、もう少し聴いてたいって思う。





      「・・今日な、ホワイトデーじゃん?」





      「あ、ホントだ。忘れてた」





      「はバレンタイン当日にチョコくれたじゃん?」





      「うん」





      「でも、俺、ホワイトデーにお返しできなくって」





      「そんなコト気にしてたの?」





      「俺にとっては重要なコトなの〜・・・」





      敏弥は上から私の頭をクシャクシャと撫でてくれた。
      凹んでんのか眠いのかよく解んない口調で敏弥は淡々と言葉を紡ぐ。
      その殆どが、ごめん、って謝罪の言葉。
      全然怒ってもないし、薄情だ!なんて思ってもないんだけど。
      敏弥の声をもっと聴いてたいから、何も言わないことにする。





      「さ、欲しいモンある?明日買いにいこ〜・・?」





      「明日・・仕事ないの?」





      「ん〜・・・午後からっぽい〜・・」





      「じゃあさ、明日の朝まで一緒に寝ててほしい・・・デス」





      「んー・・・買い物行けないじゃん」





      「だから、お返しは『敏弥が朝まで一緒に寝ててくれるコト』がいい」





      忙しい人だから、少しでも長く休んでてほしい。
      有名な人だけど、少しでも私の近くにいてほしい。
      私には癒してあげることも、ずっと近くにいる事もできないけど。
      私の我が儘が、貴方を少しでも楽にしてくれるといいな。
      敏弥といるとね、不思議と真っ白になれる気がする。
      もっと傍にいてとかそんな事どうでもよくなっちゃってさ。
      真っ白な中に、敏弥が入り込んでくるから。
      だから、いつだって敏弥の事しか考えられなくなる。
     





      「そんなコト〜・・?」





      「そんなコトって何よ。『お返し』でしょ?」





      「そんなのお返しになんねぇもん」





      「どうして?」





      「お望みなら、一生傍で眠りますよ、姫?」





      ほらね、真っ白だった私が一瞬で敏弥色。
      絶対寝ぼけてる!って思いながらもこの時間を壊したくないの。
      もし明日起きて、このコトを敏弥が覚えてなくてもイイや。
      寝ぼけてても冗談でもなんでも構わない。
      白に落ちた色は、余すところ無く広がってくってこと。
      





      「・・恥かしいっての・・・・」





      「・・・・・」





      「敏弥・・?寝ちゃった・・・?」





      「・・・・・・」





      「・・ありがと・・・大好き」





      「俺も」





      別にお返し目当てじゃないし、期待してたわけじゃない。
      純粋な気持ちだけって言ったら嘘になるかもしれないけど、でもホントだよ?
      でもさ、こういうお返しは困るよ。
      だってお返しは「敏弥」ってコトでしょ?
      チョコと敏弥じゃ全然釣り合わない、申し訳ないよね。
      一生分だって言われたら・・・どうしようかなぁ。
      一生一緒にいられるなんてさ、嬉しすぎて困るんだもん。
      





      「寝たふり?サイテー・・・」





      「明日さ、やっぱ買い物行こう」





      「私の話聞いてた・・?」





      「うん、だから買い物行こう」





      「・・・?」





      「指輪、買いに行こう?」





      訂正。
      敏弥といると真っ白には戻れないのかもしれない。
      いつだって敏弥の事で頭がいっぱいなんだもん。
      どうしてかな?
      大好きだけじゃ語りきれないこの感情。
      ねぇ、敏弥?どうしてかな?
      明日になったら、答え、解るかな?
























      BE HAPPY・・・?


      ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

      イベント事には必ず遅れをとる未邑です。
      ホワイトデーだって昨日気付いたんですがやっぱり間に合わず。
      因みにバレンタインも5日くらい遅れた気がします。
      時の流れは無情だとよく言ったものです。

      因みにタイトルに深い意味はないです。
      寧ろ関係ないくらいの勢いです。
      寝ている敏弥は、携帯オフィで取れる画像の敏弥を想像してください。
      スッピンで眠そうに手招きしてるかのように、私には見えたんです。




      20040315  未邑拝












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