消費税より日本を救いそうな愛の形。
      5%くらいじゃ収まらへんのが俺等の実態。




















       TRICK OR TREAT
























      「トリック・オア・トリート?」


      「・・・は?」


      

      ドアの前に、悪魔がおった。


      それは最近あんま会ってへん恋人で。
      黒いマントと尖った帽子に包まれた小さな身体。
      少し意地悪そうな顔で俺を見た。


      「トリック・オア・トリート!」


      「・・・?」


      「もぅ!今日はハロウィンだよ?!」


      あぁ、ハロウィンか。
      ・・・って、そんなメジャーなイベントとちゃうやろ。
      

      「どっち?」


      「・・・じゃーお菓子で。とりあえず中入りぃや」


      こうやって、可愛ぇ悪魔が部屋の中に入り込んできた。
      俺は黒いブーツを端に並べてドアの鍵を締めた。




      






      可愛ぇ悪魔・・・改めはカーペットにちょこんと座っとって。
      とりあえず温かいコーヒーを淹れた。
      甘党のの為に常備するようになった角砂糖。
      俺はそれを2個、スプーンと一緒にソーサーに乗せた。


      黒いマントを脱いだはいつもの姿で。
      ベロアのピンク色のキャミソールは少し寒そうに見える。
      黒いスカートからチラっと覗く網タイツの細い脚。
      エアコンを点けようかと思ったけど思いとどまる。
      コーヒーを熱くしすぎたから。


      「寒かったやろ?」


      「うん」


      「なんでもっとあったかい恰好して来ぃへんねん」


      「寒かったよ」


      「わぁーっとるわ。せやから・・・」


      「薫がいないからね、寒かったよ」


      コーヒーが熱すぎた。
      きっとその所為や。
      顔が、熱い。


      最近無駄に忙しかった気がする。
      全部必要なことなんやろうけど、必要ないと言えば必要ないような。
      オフなんか貰えるわけあらへんくて。
      でもそれが当たり前のような毎日。
      感覚が麻痺しとったんかもしらん。

 
      もう何日会ってなかった?
      に隠れて指折り数えてみようとした。
      でも1日1日の区切りさえ不確かな毎日じゃ数えることすら出来ひんくて。
      最後にの顔を見た日の記憶を辿ってみる。
      少なくとも、すぐ思い出せる程度の日数じゃあらへん。


      「私ね、賭けをしたの」


      「誰と?」


      「私と」


      「どんな?」


      「31日が終わるまでに薫が連絡くれたら勝ち、くれなかったら負けって」


      「・・・賭けたモンは?」


      「私。勝ったら何もなかったことにするの。負けたら別れようって」


      「阿呆なことゆーなやっ」


      「ほんと、馬鹿だよね」


      白い角砂糖をコーヒーに入れてスプーンで混ぜる。
      ゆるゆると渦を巻く黒に言葉が落ちる。
      

      もしかしたら・・・寂しい思いをさせとったんかもしらん。
      俺、全然気付けへんくて。
      寂しいなんてよーゆわん子やから安心しとったんかもしらん。
      もしかしたら・・・いや、もしかせんでもそーやろ。

      
      「ホントはね、あと2時間待ってようと思ったの」


      の言葉で初めて時計に目をやる。
      10時を回ったばかりの長針。
      31日もあと2時間弱で終わろうかとゆーところやった。


      「でも待てなかった」


      「・・・すまん」


      「もしあと2時間中に連絡来なかったら別れるって・・・出来ないもん」


      「・・・


      「だからね、結局会いにきちゃった」


      そうゆって笑ったはやっぱ寂しそうで。
      なんでちゃんと気遣ってやれへんかったんやろうか。
      寂しいなんて感情、誰にでもあるもんやんか。
      が寂しくないなんてあるはずあらへんがな。


      俺はの横に座って、持っとったコーヒーカップをテーブルに置いた。
      ちょこっと反省して背筋を伸ばした。
      めっちゃ反省して正座してみた。
      はそれを見て困ったように笑った。


      「ねぇ・・・」


      「ん?」


      「かまって欲しいって・・・言ったら怒る?」


      申し訳ないような、それでいて恥かしそうな。
      俺の横に正座をして、はそうゆった。


      正座をしたを無理矢理自分の膝に寝かせる。
      そんなに重くないけど確かにある存在感。
      温まりかけた神を指で梳いてみた。


      24時間ある1日のうち、のことを思い出す時間はどのくらいあったやろうか。
      繋がった時間の記憶を懸命に手繰り寄せてみる。
      はっきりと思い出せるんは仕事のことだけやなんて。
      最悪やん、俺。


      「薫ー?」


      「寂しい想いさして、ごめんな」


      「んー・・・うん」


      上を向いたの前髪を出来るだけ優しく掻き上げる。
      大きな瞳と向き合うのが少しだけ恐い。
      俺のこと、どんな風に見えとんのやろうか。
      

      猫にするようにの顎を撫でる。
      気持ち良さそうに目を細める姿は猫そのもの。
      俺は少しだけ開かれた唇を舌でなぞってみた。


      「・・・あまぁー・・・」


      「お砂糖全部入れたもん」


      「甘いもん好きやなー」


      「甘いものが好きなんじゃなくて、苦いものが嫌いなんだもん」


      「おんなしやん」


      「違うもん」


      「砂糖ばっか食うと太んで?」


      「太った子は嫌い?」


      「やったら好き」


      「ガリガリに痩せた子は?」


      「やったら好きやって」


      「ホントに?」


      「ガリガリで可哀相やなーって思うわ」


      「食べるものが無い子みたいね、私」


      「コーヒーの砂糖3個にしたるわ」


      「ちゃんと溶けるのかなぁ?」


      「さぁな」


      開いた唇の間に舌を滑り込ませてキスをする。
      砂糖の塊舐めたみたいに甘い口内。
      砂糖の溶解度より確実に高い温度。
      舌が、溶けそう。


      自分は、もっとデカイ人間やと思っとった。
      周りを見て、冷静に判断出来て。
      巧く世の中渡れとるようなつもりやった。


      でも実際はそーでもなくて。
      周りもよー見えてへんから大切なものが何かも解らんようなとって。
      自分の中で付けた優先順位も忘れとって。
      遅すぎることはあらへんけど、早いわけでもあらへん。
      でももう少しだけ・・・あと2時間くらい早く気付けば良かった。
      が寂しい思いをしとることに。


      「なぁー・・・今日ハロウィンやんなぁ?」


      「そーだよー」


      濡れた唇を指でなぞる。
      紅潮した柔らかそうな頬。
      空気に晒された肩が寒いってゆうてる気がした。
      

      白い胸元に口付ける。
      吸うように、噛むように、啄ばむように。
      付けた赤い跡から俺の愛を感じるとか・・・ちょっと無理?
      

      「っ・・・ちょ、かおる・・・」


      「トリック・オア・トリート?」


      「・・・へ?」


      「お菓子やらんとイタズラすんで?」


      甘く香りそうな綺麗な身体。
      這わせる指をオブラートで包んで、可愛いイタズラ。
      コレに愛しさと愛をプラスしたら、最強なんとちゃう?
      嘘、最初っから込みやったわ。


      消費税より日本を救いそうな愛の形。
      5%くらいじゃ収まらへんのが俺等の実態。
      愛し愛されで100%が理想の未来。
      肌を重ね合わせる構造改革。


      「・・・もうしてるじゃん・・・」


      「甘いもの不足やねん、俺」


      「んっ・・・仕事・・疲れてるの?」


      「そ。せやから甘いもん、食わして?」


      「・・・甘いもの・・・私?」


      「あかん?」


      「・・・綺麗に食べてよね」


      「大丈夫、俺、A型やから」


      「・・・食べる前に言うこと、ない?」


      「・・・ずっと連絡せんで寂しい思いさしてごめん・・なさい」


      「他には?」


      「連絡します」


      「他には?」


      「別れるとかゆわんで。俺、が好きやから」


      「一番大事なこと忘れてるよ?」


      絶対に寂しい思いはさせへんとかゆえん。
      仕事柄、自由な時間が取れへんのは事実やし。
      でも、「仕事柄」を隠れ蓑にしたらあかんと思うねん。
      

      好きなら、ちゃんと大切にしたらなあかんと思う。
      無くしたないなら、待たせるだけじゃあかんと思う。
      例えばさっきまでの俺みたいに。
      好きやから、ちゃんと大切にしようと思う。
      無くしたないから、自分から行動起こさなあかんと思う。
      例えば、みたいに。


      ハロウィンってどんなイベントやったっけ?
      よー覚えてへんけど、願いを叶えてくれるようなもんやなかったはず。
      せやけど何となく願ってしまう。
      

      トリック・オア・トリート?


      目の前の小さな悪魔がほしい。
      この悪魔が手に入るんなら、お菓子でもイタズラでも構えへんわ。
      カボチャにお願いする俺もまだまだ若いわ。
      ・・・なんてな。


      「いただきます」


      窓の外にはオレンジ色したデカイ月。
      お誂えむきな夜に現れたのは悪魔やなくて魔女やったんかもしらん。
      せやったら魔女を食った俺が悪魔?
      

      甘いもの好きの悪魔なんて、聞いたことあらへんけどな。































      BE HAPPY・・・?

      ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

      5万打御礼リクで如月れん様に捧げます。
      【もう泥吐くくらいの甘で】とゆうリクだったのですが・・・如何でしょう?
      そしてまたしてもイベントに乗り遅れたネタになってしまいまして・・・(;´Д⊂)
      れん様のみお持ち帰りOKです★
      リクありがとう御座いました!!


   
      20041105  未邑拝





      
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