5月ってあんま好きじゃねぇの。
      なんか毎年鬱な気分になるし、全然やる気出ねぇし。





















     AY ICK
























      あーウゼぇ。
      雨が降ったり止んだり降ったり止んだり。
      どーせ降るならドバーっと降ってカラッと晴れろよ。
      空気だけ何日もジメジメジメジメしててさ。
      このまんまじゃ風呂場とかカビ生えそう。
      その前に俺にカビが生えてモコモコになるかもな。



      こんな憂鬱な気分の日には決まってに会いたくなる。
      俺のすっげぇ大好きな奴。
      どんなときだって明るくて太陽みたいた子。
      俺が凹んでるの、いつだって一番最初に気付いてくれて。
      何度もの笑顔に助けられてる。



      「会いに・・・行こっかな」



      俺はどんよりと重い空気の中、傘を持っての家へと向かった。
      湿気で汗ばむくらい暑い。
      タクシーで20分の距離なのに、かなり遠く感じる。
      あぁ、あれだ。運転手の吸ってる煙草の匂いが悪いからだ。
      いや、流れてるつまんねぇ演歌が悪いのかも。
      やっぱバイクでくれば良かった。
      でも雨降ってきたら嫌だしなー。
      何でも良いからさっさと着いてくれよ。



      










      「うわっ・・・雨降ってきたし・・・」



      タクシー降りたらすっげぇ雨で。
      降るなら降るって言えよ、傘持って来てねぇっつーの。
      あー何でマンションの反対側で降りたんだろ、俺。
      だって車多くて反対車線に曲るの大変そうだったし。
      無理して良い人ぶるんじゃなかった。
       


      「風邪引いたらに看病してもらおっと」



      俺は突然降りだした雨の中、のマンションへと走った。
      何っつーか・・・マンションの前なんだから横断歩道つけろよ。
      つかさ、車も車で止まってくれればいいじゃん。
      世の中案外冷たいなー、ついでに雨も冷たい。



      走りこんだマンションのエントランス。
      そのままエレベーターでの部屋の前まで。
      チャイムを押せども・・・出てこない・・・。
      次で6回目。俺ってかなりしつこい奴?
      いや、連絡もせずに来た俺が悪いんだけどさ。
      


      「・・・勝手に入っちゃお」



      俺は合鍵を差し込むと勝手に中に入った。
      合鍵くれるってことは入っても良いって証拠だよな?
      うん、俺はそう思ってるし良いや。
      とりあえずおじゃましまーす。



      「あーこの部屋暑・・・?!」



      濡れた上着を脱ぎながら玄関から一直線のリビングへと足を運んだ瞬間。
      俺の目に飛び込んできたのは倒れている
      一瞬、最悪の事態が頭をかすめた。
      いや、そんなの考えらんねぇ・・・考えたくねぇよ。
      俺は急いでを抱き起こした。



      「ちょっ・・・・・・ッ!!」


      「ぅ・・ん・・とし・・・?」


      「そうだよ!俺のことちゃんと解るか?!」


      「ぇ・・・?ぅ、うん・・・」


      「頭は打ってねぇな。あ、きゅ、救急車呼ぶから待ってろよ!」


      「は・・・?ちょっと・・・落ち着いてよ・・・」


      「体調悪いんだろ?!心配しなくても俺が・・・!」


      「・・・敏弥の方が病院行った方がいいよ・・・?」


      「何言ってんだよ!あ・・・その恰好・・・もしかして・・・」


      「ぅん、状況飲み込めた?」


      「・・・レイプかぁ?!誰が俺のを・・・!!!」


      「アホ!!!!」



      いってぇー・・・グーで殴ることねぇじゃん・・・
      とりあえずレイプじゃないんだよな、よかった。
      だってさ、が紛らわしい恰好してんだもん。 
      真っ白なタンクトップに下は下着だけ。絶対ノーブラ!!
      つーか。この恰好は普通に危ねぇ。
      今来たのが俺じゃなくて薫くんとか京くんとか堕威くんだったらどーすんだよ。
      絶対喰われる!
      鍵掛かってて良かった。



      「敏弥・・・冷たい」


      「あ、あぁ・・・外雨降ってたから」


      「お風呂入りなよ。濡れたままだと気持ち悪くない?」


      「も一緒に入ろ?」


      「絶対イヤ」


      「ケチー・・・」



      俺は横たわったを抱きかかえたまま、濡れた髪を頬に押し付けた。
      しかめっ面も可愛いの。
      俺はに縋るように上からぎゅっと抱きしめた。
      

      は絶対気付く。 
      人の痛みには必要以上に敏感な奴だから。
      でも今日は、すっごく心配してほしい気分かも。



      「なんか、あった?」


      「んー別にー」


      「・・・言わなきゃ解んないよ・・・」


      「テレパシー」



      俺が自分の頭との頭とを指の軌跡で繋ぐと、急には目を逸らした。
      みるみるうちに大きな目に涙が溜まっていく。
      俺の声が出るより先にの目からポロポロと涙が零れた。
      

      ちょっと待って・・・俺、悪いこと言ったか?!
      泣かせるつもりなんてこれっぽっちもないのに。
      ヤバイ・・・ヤバイヤバイヤバイヤバイ・・・どーしよー・・・



      「えーっと・・・ちゃん・・・?」


      「解んないよ・・・」


      「・・・え?」


      「私だって人間だもん・・・テレパシーなんて使えないよ・・・」


      「え・・・いや・・・それは冗談で・・・」


    
      いくら俺だって本気でそんなこと思ってねぇし!
      つーかテレパシー使えなくて泣いてんのかな・・・?
      いや、違うだろ、俺!
      あーヤバイ・・・一人突っ込みとか有り得ねぇー・・・
      薫くんのことバカにできないや。


      俺はの涙を拭いながら次の言葉を考えた。
      でもそれさえもの言葉に遮られて。



      「私・・・敏弥が辛くっても何もしてあげらんないし・・・」


      「いや、そんなこと・・」


      「それ以前に、何で辛いのかも解んないし・・・」


      「それは・・・」


      「私なんて役立たずだし・・」


      「!」


      「私なんてもぅいらないんだよ・・・」


      「!!」



      普段のは「私なんか」って言葉絶対に言わない。
      自分を貶めるようなことは絶対に言わない。
      弱ってる証拠、の心が。
      こんな風になるまで気付かねぇ俺の方がサイアク・・・
      でも反省は後で!


     
      「・・・一緒、風呂入ろ!」



      俺は嫌がるの言葉をスルーして、風呂場に連れて行った。
      小さな抵抗をものともせずの服を脱がせる。
      俺こそレイプしてるみてぇ・・・後で殴られっかな・・・
      そんなこと考えながら裸のを空の浴槽へと放り込んだ。
      上から熱めのシャワーを思いっきりかける。


      「っちょっと・・・としッ・・・!」


      「俺もはーいろっと」


      シャワーが浴槽の中のに当たるようにセットして、
      を後ろから抱きしめるように一緒に浴槽へと入った。
      あ、風呂の詮してたらこのまま溜まるかな?



      「と、敏弥!ちょっと・・・」


      「今日さ、雨降ったり止んだりしててジメジメしてんじゃん?」


      
      怒るを脚の間に座らせて身体全部で抱きしめる。
      シャワーが当たってる部分だけ少し赤くなってるのが見える。
      ねぇ、暴れないで?
      ちょっとだけ、このまま出抱きしめさせてよ。
      ちょっとだけ、このまま俺の話を聞いて?



      「窓開けても空気ベトベトだし、クーラー付けたら寒いし」


      「・・・」


      「やっぱさ、太陽が見たいわけ」


      「・・・ぅん・・・」


      「だからに会いたくなった」


      「・・・どうして私なの?」


      「どうしてだろ?俺もよく解んないけど多分・・・」



      は俺の太陽だ!とか恥かしくて言えねぇけど。
      でもそう思ってるのは本当だから。
      太陽みたいに明るい笑顔が愛しくてしょうがないとか言えねぇけど。
      でも本当にそう思ってる。
      今はまだ、恥かしくて言えねぇんだけどさ。
      だから今は・・・



      「やっぱが好きだからじゃねぇ?」



      多分まだ外は雨が降ってる。
      5月の天気なんてそんなもん。
      そのまま6月の梅雨の時期に突入するから。
      5月の雨は人を惑わせる。
      きっと夏を想わせる太陽を隠してしまうから。
      急に姿を隠した太陽が恋しくて、人はオカシクなるんだと思う。
      


      「俺にはさ、しかいねぇの。わかる?」


      「・・・うん」


      「だったら“いらない”とか言うなよ」


      「・・・ごめん」


      「〜〜泣くなって!」


      「・・・うん・・・」



      徐々に貯まってく浴槽のお湯にの涙が落ちては消える。
      必死に涙を拭おうとする姿も可愛いの。
      なんか小せぇ子供みたいで可愛い。
      俺は甘噛みするようにの耳に口付けた。



      「私ね、最近ちょっとオカシくて・・・」


      「うん」


      「病気じゃないのに全然やる気がおきなくてダラダラしてて・・・」


      「うん」


      「こんなんじゃダメだって思うんだけど、身体が動かなくて・・・」


      「うん」

      
      「凄くダメな人間だって思えたの・・・」


      「そんなことねぇよ」



      太陽が見えないとき、人は太陽を焦がれる。
      だけどさ、太陽からだって人は見えねぇんだよな。
      太陽だって人が見たくて見たくて、オカシクなってんのかもしれない。


    
      
      「俺がさ、ちゃんと見てるから。ちゃんと知ってっから」




      やっぱさ、人間と太陽って離れらんねぇんだよ。
      どっちがなくても成り立たないくらい弱い存在。
      太陽が絶対的存在だって誰が決めた?
      ごめんな、俺も勘違いしてたのかも。
      だってほら、腕の中の太陽は今にも消えそうなくらい弱々しい。




      「がダメな人間じゃねぇってこと」




      いつだっては明るくて俺を助けてくれる存在だって思ってた。
      俺、に甘えすぎてたのかな。
      だからさ、今度は俺がを助けてあげたい。
      太陽にはなれなくても風くらいにはなってやれるかな。
      太陽を隠す雲を吹き飛ばしてやるのが、俺の役目。



      
      「明日晴れたらさ、出掛けよっか」


      「・・・何処に?」


      「何処でも良いよ。太陽が見えるとこ」


      「・・・仕事はいいの?」


      「んー・・・たまには光合成しないとね」


      「光合成?人間なのに?」


      「人間だって光合成は必要!は今、元気が足んねぇの!」


      「元気が?」


      「そ!だから明日は元気を貯めに行くの!」


      「光合成で元気を貯めるの?」


      「うん。そしたら雨の日でも、頑張れそうじゃん?」


      「・・・うん、行く・・・行きたい」


      「よし、決まり!明日、晴れるといいな!」


      「・・・うん!」



      にっこり笑ったの顔はやっぱり太陽みたいで。
      俺、わざわざ明日外に行く必要ないのかも。
      ジメジメ気分をシャワーで洗い流してはやく綺麗になりたい。
      きっと風呂上がる頃には外は晴れてる。
      だってが笑ってるから。



      5月ってあんま好きじゃねぇの。
      なんか毎年鬱な気分になるし、全然やる気出ねぇし。
      でも今年はそれも良いかなって思ってる。
      どんだけ雨が降っても、絶対晴れの日はくるから。
      とりあえず、明日天気になぁれ。

























      BE HAPPY・・・?



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      イッヒッヒ・・・プチアンケで100到達1位記念の敏弥ですー。
      展開が早い上に意味が解らない!とか言わないで下さい(;´Д⊂)
      一昨日は大雨だったんで、なんとなぁーくこんな話になっちゃいました。
      敏弥夢を期待してた方、すんません;

      ちなみにMAY SICKとは5月病を英語にしてみました。
      5月病にかかっちゃった方とかいらっしゃいませんか?
      アレって原因不明ですよね。何なんでしょう?
      この意味不明さをお話にしてみたかったんです。なってません、はい。


      少しでもお気に召しましたら感想いただけると嬉しいです!!


      20040512 未邑拝
      














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