聞き分けのない子は嫌いだよ。


キミはいつも俺の気持ちを解ってくれない。


俺だってキミの気持ちなんか理解出来ない。








聞き分けのない子は・・・















削除と再生























目が覚めると俺は真っ先にの部屋へ行く。

これが俺の毎朝の日課。

今日も、いつものようにの部屋のドアを開け、一直線にベッドへ向かう。




――いない――



また・・・?



踵を返し、の部屋を出て足早に浴室へ。

いた!!

これで4度目だ。

浴槽にもたれ掛かり、左腕を湯船に浸けている。



「おい!!!起きろ!!ってば!!」

そう言ってバシバシとの頬を叩く。

「ん・・・・・・エ・・・ンヴィー・・・」

目を開けたは掠れた声で俺の名を呟く。

泣いていたんだろう。

目は真っ赤で腫れぼったく、頬には涙の痕が残っていた。



「お前さぁ・・・何度同じ事繰り返せば気が済むの?俺達はホムンクルスなんだよ?

 手首切ったぐらいで死ねるわけないだろ?すぐ再生するんだから」

子供を諭すように言うと

「だって・・・死にたかったんだもん・・・人間らしく・・・死にたかったんだもん・・・」







何度、彼女の口からこの言葉を聞いただろう。

切なげに俯きながら言葉を紡いでいく姿を・・・何度見ただろう。

その度に俺の胸は苦しくなる。



どうして『人間』になりたいのか。

どうして、そんなに『死』に固執するのか。



今のままでいいじゃん。

年を取る事もなく、何度死んでも生き返る。

ま、俺達の生命も無限じゃないけどさ。

無理に死のうとするの気持ちが未だに理解出来ない。













意識が朦朧としているを抱き上げ部屋へ連れて行く。

ベッドに寝かし、生気の無い目で天井を仰ぐ

俺はこんなを見たいんじゃないんだ!!

いつものように笑っててよ。

なんで俺の気持ち解ってくれないんだよ!!





「・・・・・

俺が呟くと、寂しそうな笑顔を向ける。

「見て・・・この腕。傷痕一つ残ってないよ・・・。人間ならね・・・痛々しい痕が残るんだよ。でも私には残らない。

 なんで!?なんでなの!?私も人間だよ!?人間と名の付く・・・!!」

「・・・人造人間」

の言葉を引き継いだ俺に、は一瞬ハッとし・・・



バシッ!!



俺の頬を叩いた。

「言わないでっ!!その言葉は・・・言わないで・・・」

「痛いじゃん」

俺は平静を装いに言った。

「でしょ?痛いでしょ?・・・ほら!人間だから痛みを感じるんだよ!?」

必死になって俺に言う





「ねぇ・・・なんでそこまでして人間になりたいの?」

俺は今まで聞きたくて・・・でも、どうしても聞けなかった事を思い切って聞いてみた。

「人間らしく・・・・・・・死にたいから・・」

やっぱり答えは同じ・・・か。

「ハハッ・・・人間らしく!?なんだよ!それ!あんな単純で醜くて愚かな生き物のどこがいいわけ?」

俺が毒づくと

「ちゃんと成長して年老いて死んでいきたい」





解らない。

の考えてる事は全然理解出来ない。





「俺が傍にいるだけじゃダメなの?」

今まで言った事のなかった言葉を初めて口にした。

いつも恥ずかしくて言えなかった言葉だ。

俺の心の奥底に眠らせていた言葉。



それを聞いたは驚き、目を見開いて俺を見る。

「ど・・したの?・・・・・・・冗談にしちゃ、真面目な顔して・・・」

「俺がこんな事言っちゃ、おかしい?」

「・・おかしくないけど・・・エンヴィーにそんな事言われたの初めてだし・・」

「そりゃあね。俺だって初めて言ったんだもん」

そう言うとは頬を赤らめ俯いた。



こういう所は素直で可愛いんだけどな・・・。








その日、俺は仕事で再び寝付いたに軽い口付けをし部屋を後にした。
































アジトに戻ると「がいない」と、ラストやグリードが探し回っていた。





あいつ!!

まさか・・・本気で!?





今まで、仕事以外では一歩も外に出た事のない


















―――本気で死ぬつもりだ―――
















俺はそう直感し、街の至る所を探した。





と・・・とある路地裏から変な音が聞こえた。


ヒューヒューと・・・人の息づかいにしては不自然な音。


その音に近付くと真っ赤な血を大量に流し倒れているを見つけた。





ここまでして死に急ぐ事ないのに・・・。

首から血をダラダラ流し・・・それでもまだ自分で首筋を掻っ切る。

がいつも持っていた小さなナイフで・・・何度も何度も・・・。

身体が再生する前に再度切り、その度に赤い鮮血が辺りに飛び散る。

既に何十回と死んでいるのだろう。











もう・・・無理なんだね。



俺が支えてやると言った事も拒否した



最期に・・・俺が出来る事・・・。



ホムンクルスとして生まれ変わり、初めて愛した人に喜んでもらえる事・・・。










「もう・・・自殺しなくていいよ。俺がこの手で、お前を殺してあげる」










そう言って俺は右手を刃に変え、愛する人を刺した。


幸せそうに微笑む


その表情を見ているのが辛かった。


目を逸らし、単純作業のように何度も腕を振り上げる。















愛する人を自らの手で葬った。

人を殺す事なんて日常茶飯事なのに・・・なんで涙が止まらないんだ?



最期に・・もう一度キスをした。

サラサラと音を立て消えていくの身体。

少しだけ残ったカケラを手に取る。














今でもの気持ちは理解出来ない。


本当に最期まで聞き分けのない子だったね。





でも・・・・


いつか・・・また会えるよね。


会いたくなったら、いつでも言って。


俺が再生してあげるから。










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未邑ちゃん!!お誕生日おめでとう!!
なんとか遅れる事なく仕上がりました!!
物凄いシリアスな上に死ネタやけども・・ほんまにこんなんで良かったんか?誕生日やで!?
とにかく、こんな夢で良ければ貰ってやって下さい!!


お誕生日記念   氷折 未邑様へ。。

2005/06/12  T 拝(笑)


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ヒイィー!!あああありがとう!!
本当に書いてくれるなんて・・・感激っすよ、先輩!!<何故か部室系
誕生日にシリアスとか他の人じゃ絶対にありえないかも?(笑)
でも良いの!こんな深い愛に苦しむエンヴィーが見たかったのvV
でも悲しいだけで終わらない、未来に繋がってるところが流石Tっす!
ほんとにほんとにありがとう!!

20050612  未邑拝





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