嬉しいことも嫌なことも、全部含めて楽しいこと。
      俺、いつからこんな前向きになったっけ?
























      理想像
























      俺にも理想とする結婚生活がある。
      例えばさ、俺が仕事でヘタヘタになって帰ってきたりするじゃん?
      そんとき玄関まで迎えに来てくれたりさ。


      チェック柄の可愛いエプロンなんかしちゃってさ。
      色違いで買ったスリッパでパタパタ走ってくんの。
      ちょうどこんな感じ。


      「おかえりなさーいっ!」


      「ただいま♪」


      「疲れた?ご飯食べる?」


      「食べる食べる!今日なに?」


      秋だからさんまとかいいな。
      の得意料理の肉じゃがもいいなぁ。
      意外に家庭的なんだよね、作ってくれるものが。
      たまに失敗して豚肉使ってるトコも可愛いの。
      もー下手惚れなわけよ、俺。


      エプロンしたと一緒にダイニングまで行って。
      テレビなんか点けずに今日あったことを話してさ。
      は笑いながら聞いてくれて。
      用意された飯一緒に食いながら今度はの話聞いて。
      楽しかったことも悲しかったことも全部聞いてやんの。
      そっか、って相槌打ちながら。


      なのに…


      「焼肉だよ!堕威くんがお肉持って来てくれたの!」


      「……は?」


      靴を脱ぎ捨てて慌ててリビングに飛び込んだ。
      そこにいたのは堕威くんだけじゃねぇし。
      右から呼びまして薫君、京くん、心夜、堕威くん。


      何で全員揃ってんだよ。
      4人揃ってさっさと帰ったのはこの為か。
      つかもこいつ等上げんなよ!
      とか言っても無理だろーけど。


      「…何でいんだよ」

 
      「買い物行ったらなんやえぇ肉見つけてん。こらおすそ分けせなあかんと思てな」


      「余計なお世話だし」


      「余計な世話ってなんやねん。感謝しぃや」


      「何に感謝すんだよ」


      昨日は京くん。
      その前は堕威くんと心夜、そのまた前は薫くん。
      毎日毎日絶対誰かが上がりこんでくる。
      俺達の邪魔してるとしか思えない。


      だってな、一応新婚なんだよね。俺達。
      そりゃ最初のうちは皆が祝ってくれてるって感じで嬉しかったけど。
      コレはやりすぎだろ。

   
      毎日毎日遅くまで居座りやがって。
      片付け終わる頃には、眠くなってんだけど。
      俺達の夜の性活はどーしてくれんだよ。

  
      「敏弥・・・怒ってる?」


      立ったままの俺の腰に抱きついてくる
      あーもー可愛すぎだっての!


      「怒ってないよ」


      俺はの頭を撫でて、堕威くんの横に座った。
      新しい部屋で焼肉やったらニオイ付きそうなんですけど。
      エアコンを付けてるとこはちょっと良心的。


      「ちゃんも座りぃや」


      「何で堕威くんの横に座らせんだよ!」


      「じゃぁ俺の横きぃや」


      「京くんの横の方がもっとダメ!妊娠しちゃう!」


      「なんやと?!色魔のお前に言われたないわ!」


      「色魔ってなんだよ!にしか欲情しねぇし!」


      「食事中に下品」


      を引き寄せて自分の横に座らせる。
      一気にに視線が集まった気がする。
      邪な目でを見んなっての!


      「あのさ・・・」


      「敏弥ぁー!ビール持って来てやー」


      「・・・はぁ?何で俺が・・・」


      「あ、私が持って来るよ」


      「あーえぇって。敏弥が行けばえぇねん。リーダー命令」


      「意味解んねぇし」


      「使えん奴っちゃなー。もーえぇわ」


      オヤジは腰が重いから困る。 
      年寄りって言ったら怒るくせに、年寄りは労われだとか。
      屁理屈ばっかり・・・って、おいおい!


      「ちょ、薫くん!そこキッチンじゃねぇーし!」


      「あー?だって俺解れへんもーん」


      「キッチン目の前に見えてんだろ?!」


      「そんなん知らん」


      薫くんの馬鹿。
      俺は寝室に入って行きそうになる薫くんを慌てて止める。
      見られて良い場所と悪い場所ってもんがあるじゃん。
      さすがにメンバーにも寝室は見せらんない。


      つーか薫くん酔ってんな。
      一番の常識人の薫くんがこんな行動に出るわけがない。
      あーこいつらいつから飲んでんだよ。


      薫くんがブツブツ文句言いながら帰ってくる。
      文句言いたいのはこっちだっての。
      

      「なぁ、ー眠ぅなってきたぁー」


      「きょ、京くん?えっと・・・」


      「膝枕・・・あかん?」


      はぁ?!膝枕ぁ?!
      膝枕ってラブラブカップルがやるもんだろ?!
      なんでの綺麗な脚に京くんが頭埋めてんの!


      「ダメに決まってんじゃん!ほら、京くん!起きて!」


      「お前にゆってへんわ。なぁ、ー」


      「敏弥、京くん仕事で疲れてるんだし・・・」


      「じゃー俺がする!京くんおいで!俺が膝枕したげるから!」


      「嫌や。なんでそんな筋肉に頭置かなあかんねん」


      冷たく一刀両断された。
      京くんはの真っ白な脚に頭置いちゃってるし。
      俺でさえあんま膝枕とかやってもらえないのに!
      眠いなら帰れっての!


      「敏弥ぁービールー!」


      「あーはいはいはいはい」


      何でこの家には酔っ払いしかいねぇんだよ。
      俺はのそのそ立ち上がってキッチンに向かった。
      

      あ、包丁出しっぱじゃん。
      危ないなぁ。
      前も出しっぱなしにした包丁で手ぇ切ったって言ってたじゃん。
      ついでに洗っとこーっと。


      あ、ビール。
      冷蔵庫を開けてみたけど、そこには何もなくて。
      誰が買ってきたのか缶のおしるこはあったけど。


      「薫くーん、ビールもうねぇよ」


      「えー・・・じゃー買うてきてや」


      「はぁ?俺が?」


      「お前以外誰がおんねん」


      「あ、敏弥!俺にもビール買うてきてや」


      「は?堕威くんまで・・・」


      「朝日のスーパードライでよろしく。無かったら何でもえぇわ」


      無かったら何でもいいくらいなら最初から注文すんなって。
      てか、結局俺が行くことになってんの?
      あー俺だって疲れてるのにぃー・・・
      俺だっての膝枕で寝たかったのにぃー・・・


      「あ、僕アイス。バニラかチョコがイチゴがえぇ」


      「それ以外の味のアイス置いてるコンビニってなかなかないし」


      「やっぱマンゴー」


      「や、俺の話聞いてる?」


      「溶けんウチに帰ってきてな」


      「・・・」


      「ふ菓子も買うてきてや」


      「京くん起きてんじゃん」


      「今から寝る」


      「じゃーふ菓子買ってきても意味無いじゃん」


      「大アリや。さっさ行け」



      

















      結局俺は何の抵抗も出来ないまま家を追い出されて。
      家から一番近いコンビニまで歩くことにした。
      

      真っ暗な空をなんとなく眺めてみた。
      嬉しいような寂しいような、微妙な気分。
      一人で歩くには寒すぎる季節。
      秋は冬より人を感傷的な気分にさせる。


      あ、そういえば買うものなんだっけ?
      ビール・・・は一応朝日のスーパードライ。
      薫くんもそれで良いよな。
      飲んじゃえば何だって一緒のくせに。
      で、心夜のアイス。
      大人しくマンゴー買っていくの悔しいから抹茶にしとこ。
      それと京くんのふ菓子。
      大体コンビニにふ菓子とかあったっけ?
      無かったらカスカスしてて甘くて黒いもん買ってけばいいや。


      「敏弥ぁー!」


      あ、ついでにプリンん買っていこ。
      カラメル入ってない白いやつが良いな。
      でもシュークリームも食べたいかも。
      どっちも買ってっちゃえ。
      余ったら誰か食べるだろうし。


      「敏弥ってばっ!!」


      「・・・?!」


      「もー歩くの速いよ!」


      「そりゃー足長ですから・・・じゃなくて!何してんの?!」


      「一緒に買い物行こうかなぁと思って」


      「ここまで一人で来た?!危ないじゃん!」


      「大丈夫だよー。誰もいなかったもん」


      「だから危ないんデショ!」


      「じゃー敏弥も一人で歩いちゃ危ないよ?」


      にっこり笑ったに敵うはずもなくて。
      ホント危機感ってものが欠落してんだよな。
      こんな夜中に可愛い女の子が一人で歩いてるのがどれだけ危険か。
      家帰ったらちゃんと教育しなおそーっと。


      「想われてるのはね、嬉しいことだと思うの」


      「・・・?」


      「大事にされてるんだと思う」


      「?」


      「きっとみんな心配なんだと思う。愛情表現なんだよ」


      一人で歩くには少し寒い季節。
      二人で歩くには少し暑い季節。
      だけど手を繋ぎたくなる季節。
      

      「敏弥はね、みんなに愛されてるんだよ」


      「・・・知ってるよ」


      もう来ないでって。
      そう言うことだって簡単に出来るはずなんだけど。
      そんなことはしない。
      ちゃんと解って受け入れてくれる人。
      だからを好きになったんだった。


      「私の理想の結婚生活ってね、こんな感じだったよ」


      「旦那の同僚に毎日邪魔されて?」


      「違うし。旦那様のお友達に囲まれて毎日過ごすことだよ」


      「我が儘と酔っ払いと世話焼きとグレイ星人だけどね」


      「退屈しなさそうね」


      「お陰様で」


      「凄く、理想的な毎日だよ」


      の言葉で世界が変わる。
      邪魔だと思ってたものが、全部大切なものに思えてくるから不思議。
      の世界と俺の世界が混ざっていく瞬間って、もしかしたらこのコトかも。
      凄く、幸せなこと。


      「ねぇ、キスしていい?」


      「こ、此処で?!」


      「うん。今、すっげぇキスしたくなった」


      「・・・人に、見られないようにしてクダサイ・・・」


      「了解です、お姫様」



      初めはチョンと鼻の上にキスをして。
      多分ピンク色した頬にもキスをして。
      くすぐったいって笑う瞼にキスをして。
      何か合コン抜け出してこっそり悪いことしてる気分。
      秋の色に色付いた唇に、自分のそれをそっと重ねた。


      「敏弥ー!ー!どこにおんねーん!」


      「・・・か、薫くん・・・?!」


      「すぐ帰るって言っちゃったから・・・探しにきたのかも」


      「出てこいやぁー!!堕威、お前はアッチ探せ!」


      「りょーかい!!」


      「げっ・・・堕威くんまで出てきてんじゃん」


      「あ、コッチ来る」


      「、逃げるよ!」


      「えっ?」



      俺はの手をとってコンビニの方へ走り出した。
      暗いはずの道がやけに明るく見える。
      どーしてだろ?


      合コン抜け出したカップルが捕まるなんてダセぇじゃん?
      やっぱ二人の夜はこれからっしょ。
      

      「あ、堕威!そっちおったで!」


      「ヤバっ・・・、右曲るよ!」


      「ぅ、うん・・!」


      嬉しいことも嫌なことも、全部含めて楽しいこと。
      俺、いつからこんな前向きになったっけ?
      こんな結婚生活も悪くはない。
      全然理想の射程範囲内だしね。





























      BE HAPPY・・・?


      ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

      5万打御礼リクで瑠華様に捧げます。
      【結婚生活をメンバーに尽く邪魔される】ってリクだったのですが・・・如何でしょう?
      メンバー出しすぎて自分でも分けわかんなくなってしまいました、はい;

      瑠華様のみお持ち帰りOKです★
      リク本当にありがとう御座いました!


      20041008   未邑拝      

      


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