全部、ぜんぶホントのこと。
言葉じゃ表現出来へんホントのこと。
リアル・レター
久々に貰ったオフ。
アルバム製作中やけど、歌の録りはまだ先やから。
歌詞を書くっちゅー名目で貰った休み。
歌詞なんか書くわけないやろ。
の家に転がり込んで、一日だけの同棲ごっこ。
クリスマス過ぎて急に寒くなった東京。
最高気温8.2℃の街にある部屋の中。
あったかい。
「なぁ、なんしよん?」
「んー・・・お母さんに手紙書いてんの」
「なんて?」
「元気ですかーって」
「普通やん」
「普通じゃない手紙って何よ」
「見てえぇ?」
「えー・・・ヤダ」
「えぇやん」
「聞いた意味ないじゃん」
の手を払い除ける。
ピンクの水玉模様の便箋に書かれた整った文字。
おかんに手紙書くんにこんなきっちりせんでもえーやん。
変なとこで几帳面やもんな。
ツラツラ書かれた近状報告。
『元気ですか、私は元気です』は基本やな、うん。
正月は実家に帰りますって・・・俺聞いてへんし。
大晦日は俺と過ごすんやから元旦には帰さへんで。
それから、仕事のこと。
ぼちぼち巧くいってますって・・・それやったら報告せんでもえぇやん。
もっとおもろいこと書けっつーの。
こないだグラタン足の上に落として火傷しました、とか。
買い物したとき金だけ払って商品全部忘れてきました、とか。
ヨーグルト買っとったの忘れて冷蔵庫の中で腐らせました、とか。
なに都合よぉ割愛しとんねん。
「あ・・・」
「ん、何?」
「俺のこと書いてへんやん。コレ」
「京のことー?」
「恋人がおります、って」
「はぁ?そんなの恥かしくて書けないし」
「なぁーにが恥かしいねん!真実を書け、書け!」
のペンを奪って横から書き添える。
綺麗な字の下に書き殴ったような字。
・・・別にえぇねん、読めれば。
それにこれ読むん、のおかんだけやしな、多分。
えーっと・・・?
京です。の彼氏です。恋人です。
あ、彼氏も恋人もおんなしやろか?
まぁえぇか。
「ちょ、京ー・・・止めてってばー・・・」
「2月16日生まれ、B型です、と」
「何で自己紹介してんの」
「いや、最初が肝心やろ」
「私のお母さんに何期待してんの」
呆れかえったを余所に自己紹介。
手紙書くん久々やからなんか緊張するわー。
あ、ナナメった。ま、えぇや。
「は結構ドジです。たまーに痴呆始まっとんとちゃうか心配です」
「はぁ?!痴呆ってなによ?!」
「あぁ?痴呆ってのは、一旦個人が獲得した知的精神的能力が失わr・・・」
「誰が言葉の意味を聞いてんの!」
「お前やろ!ほんの10秒前に聞いたやんか!」
「意味とか聞いてないし!」
なんやねん、まったく。
ちょっとヒステリーですって付け加えとかなな。
あ、こないだ喧嘩して皿割ったことも書かな。
なんや、手紙って意外におもろいやん。
日記の延長みたいなもんか?
まぁ日記付けへんかたよー解らんけど。
「ねぇ、きょー・・・?」
「んー・・・?」
「そんな手紙見たらお母さん卒倒すると思うんだけど・・・」
「なしてー・・・?」
「まず恋人がいるってことに驚くじゃない?」
「年頃の娘に恋人がおって何が悪いねん」
「悪かーないけど、どんな人って聞かれるじゃん」
「こんな人や」
「そーね、そんな人よね・・・」
「えぇやん、今ちょうど黒髪やし」
「なにがちょうどよ?」
「紹介するにはちょーどえぇやん」
「・・・ソーデスネー」
「何やねん、その言い方」
「別にー・・・心夜くんの真似」
可愛ないなぁーってゆおうと思ったけどやっぱやめた。
そっぽ向いた顔がめっちゃ可愛かってん。
アップにしたときの後れ毛がなんかヤラしい。
細くて白い首にかかる黒い髪。
可愛くないことゆうとる口まで可愛く見えてくる。
上がりきらん後れ毛をそっと梳く。
指の間をすり抜けていく黒。
「きょ、京・・・っん・・・」
振り向いたの顎を掴んで頭を固定して。
俺の名前を呼ぶ声を待たずに口付ける。
柔らかい唇を押し当て合って。
空気を求めて開いた唇の間に舌を割り込ませる。
上歯と下歯の隙間にやわやわと舌を差し込んで。
軽く開いた咥内に唾液塗れの舌を押し込んだ。
「ぁ、ゃッ・・・」
「舌・・出せって」
「な、急にそん、な・・・ふぅんっ・・・ぁっ・・」
口が開いた隙に自分の舌を奥まで入れ込む。
溜まった唾液をかき混ぜるみたいに掻き回して。
途惑う舌に自分のソレを絡めた。
「っはぁ・・・なん、で・・急に・・・」
「あ、一個書き忘れとった」
「・・・私の話も聞けっての」
「最近がセックスさせてくれませんって」
「・・・はぁ?!ちょ、な、何書いてんのっ!」
「せやから、最近がセック・・・」
「言い直すなぁ!」
「自分が聞いてきてんやんかー」
「書くの止めてって言ってんの!」
俺から無理矢理ペンを取り上げようとする。
ガキとちゃうねんからそんな簡単にいくかい。
こー見えても来年はもうにじゅ・・・
こー見えてもって何やねん、こー見えてもって。
あ、あかん・・・一人ツッコミはオヤジの証拠や。
「京ってば!ちょっと、ホントにやめ・・・っ」
俺の太腿に手を付いてペンを取ろうとした瞬間。
自分を支えとった腕がカックンってなって、そのまんま二人してカーペットに倒れ込んだ。
右手は万歳、左手は腰の下っちゅーなんともマヌケな格好。
その上に両手を伸ばして倒れ込んだ。
ほんま何しとんねん。
倒れた勢いでの足が当たったんか、テーブルの上の手紙が落ちてきた。
手紙ぐらいよー書かせぇっちゅーねん。
別に大したこと書いてへんねんから目くじら立てんでもえぇやんか。
「もぉー京が馬鹿なことするからっ」
「俺のせぇかい」
「私の所為ですか?」
「ぁ、ちょぉ動くな!痛いって!左手下あんねんて!」
「はぁー?」
「ちょ、マジ・・・ちゃうちゃう、左腰んとこ敷いとんねん!」
「何やってんの・・・」
「あーベルト当たって痛かったわー・・・」
ちゃうねんて。
ごっついベルトしとんからしゃーないねんて。
ほら、手ぇあこなっとるやん。
膝カックンならぬ腕カックンやん。
「あ、私も一個書き忘れた・・・」
「はー?なにー?」
「京はちょっとオチャメですって」
「誰がオチャメやねん、アホか」
「仕事中はあんなカッコイイのに、家じゃかわい・・・」
「可愛いゆーな、ボケが」
「まだ最後までゆってな・・・」
「ゆわんでえぇ」
「・・・」
「・・・何やねん」
「・・・別にー」
上にねっころがるよーに頭を降ろす。
俺の心臓の真上に頭がある。
そのまんまキュっと抱きしめたら、心臓に顔を擦りつけてきた。
こーゆー一挙一動が可愛ぇ。
自分の匂い付けてまわる猫みたいやん。
サラサラした髪が素肌に当たってこそばゆい。
静かな時間。
いっつもうっさい場所におるから、静か過ぎて恐くなるくらい。
でも一人んときの静かさとは違くて。
二人でおるから、恐ないんやと思う。
「なぁ、のおかんってどんなん?」
「凄くサバサバした人・・・かなぁ?」
「サバサバってどんなんやねん」
「なんかねー・・・中学のとき自転車壊しちゃって学校徒歩のときがあってさ」
「・・・どーやってチャリ壊すねん・・・」
「それはおいといて。そのときにお母さんに自転車買ってーって言ったの、私」
「うん、で?」
「そしたら、自転車なんてその辺にいっぱいあるでしょ、って」
「・・・パクれ、と?」
「うん。サバサバした人じゃない?」
「サバサバっつーか・・・なんか間違ってへん?」
「そーかなぁー?」
親としてっつーか人間としてっつーか。
でもそんなおかんからが生まれたっつーのもなんかオカシイわ。
どっちかっつったら真面目な部類に入るやんか、って。
よっぽどおとんが真面目人間やったんやろか。
がどんな環境でどんな親にどんな育てられ方したんか。
よー考えたら俺、そんなんよー知らんわ。
特別話したりせぇへんやんか、その手の話って。
興味ないとかそーゆーんとちゃくて。
あんま興味なかってん、両親とか地元とか。
だって何処で誰に育てられようがはやからな。
とか思っとったけど、その根源を知るんも悪ないかもしらん。
ただの好奇心やけど。
にしか持たへん好奇心やから。
「今、変な親って思ったでしょ?」
「うん」
「私でもそう思うもん」
「おもろいおかんでえぇやん」
「ネタには困んないかも」
確かにそんな親やったら退屈しぃひんかもな。
って思ったけど口には出さん。
だってがあんまり懐かしそうに笑うから。
俺も想像してなんとなく笑った。
「なー・・・俺紹介してもらえんのー?」
「・・・珍しいね、そんなことゆうの」
「あかん?」
「あかん・・・くない・・・けど・・・」
「けど?」
「・・・ゆっても怒んない?」
「何を?」
「怒んないならゆう」
「せやから、何をやって」
「うわー絶対怒りそう」
「ウザいわ!怒れへんからさっさゆえって」
「怒ってんじゃん・・・」
「お前がさっさとゆわへんからやろ」
「あんね・・・実はもう、ゆっちゃったんだ、お母さんに」
「何を?」
「恋人いるって・・・京のことゆっちゃった」
「・・・マジ?」
「・・・マジ」
申し訳無さそうに上目遣いで俺を見る。
どこらへんに俺が怒る要素があるか解れへんねんけど。
親の承諾がほしいとかそんなんとちゃうねん。
ただ、の生活の一部になれるみたいやんか、そーゆーのって。
別に後ろめたい付き合いしとるわけとちゃうしな。
「ほな、今度あいさつ行かな」
「なんて?」
「最近セックスさせてくれませんって」
「ゆった瞬間吊るされるね、きっと」
「愛されてんねや?」
「うん」
「幸せやん」
「お母さん、きっと京のことも好きになるよ」
「・・・博愛主義者か?」
「バカ」
少しだけ捲れ上がったスカートの裾から手を入れてみた。
見事にペチっと渇いた音と鋭い痛み。
後で覚えとれよ・・・。
横を向いたらさっき落ちてきた手紙。
綺麗なんは最初の六行くらい、の字。
そっから下は上と比べたら汚いし読みにくい字。
ちゃんと線の中に書いてへんし、ナナメやし。
でも、これがのホントの生活やん?
『ぼちぼち巧くいってます』な仕事の休日。
手紙書きよったらアーティストな恋人に邪魔されたり。
ちょっと引っ張ったときに破れた端の方。
ペンを取り上げようとしたとき付いた黒い線。
恋人とじゃれあったときに足でけって皺になった紙。
全部、ぜんぶホントのこと。
言葉じゃ表現出来へんホントのこと。
「も一個、書き忘れたことあるね」
「なん?」
「毎日仲良くやってます、ってね」
BE HAPPY・・・?
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5万打御礼リクで京魔様に捧げます。
【家でほのぼの系】ってリクだったのですが・・・如何でしょうか?
ほのぼのを通りこして無意味系になってしまったような気がしてなりません(汗)
京魔様のみお持ち帰りOK!
リクありがとう御座いました★
20041228 未邑拝
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