何をなくしても。
      俺の手にはアンタだけが残ればそれでえぇ。


















      Only One



















      日付が変わる一時間前。
      誕生日前くらい仕事早よ終わらしてくれてもえぇやんか。


      約束しとったわけやないけど、多分が来とる。
      マンションの前に見覚えあるチャリ。


      前、夜中に歩いてウチまで来たことあんねん。
      それからタクシーで来いってゆーとんのやけど。
      俺のゆーこと何もきかへんねんな、あの阿呆は。


      部屋行ったら叱ったらなあかんな、とか。
      そんなこと思いながら玄関を開けた。


      「おっかえりー!」


      「・・・誰やねん、お前」


      「ひっでー!愛しのベーシスト、敏弥くんですっ!」


      「キモいんじゃッ!なんでお前がおんねん!」


      「お帰りぃー!」


      「!お前、知らん奴家にあげんな!」


      「敏弥くんは知らない人じゃないもん」


      ドアを開けたら敏弥が飛び出してきた。
      つーか、俺の靴じゃない男もんの靴があと2足ある。
      誰やねん。


      「薫くんと堕威くんも来てるよ?」


      「・・・なんでおんねん・・・」


      靴を脱いでリビングへ。
      そこには当たり前のように寛ぐ薫くんと堕威くん。


      ご丁寧に珈琲まで出してある。
      犯人はしかおらんし。
      こいつには警戒心っちゅーもんはあらへんのか。


      「おーおかえりー。遅かったな?」


      「薫くんは早かったな・・・」


      「当たり前やんか!」


      「何が当たり前やねん」


      が座れって促してくる。
      あぁー俺の寛ぎスペースは堕威くんに占領され中。
      家主の待遇が悪すぎとちゃうか?


      「あのね、もうちょっとで京の誕生日じゃない?」


      「あーぁー・・・うん」


      「だからね、ケーキ作ってきたんだ!」


      そーゆってテーブルの上に置かれた箱。
      その上蓋をそっと開けてみると、中から出てきたのは真っ白なケーキ。
      

      苺とか生クリームとかとにかく綺麗に飾ってあって。
      店で買ってきたんとちゃうかと思たくらい。


      「チョコケーキにしようか迷ったんだけど・・・」


      「京くんは生クリームも好きだから大丈夫だよ!」


      「なんでお前がゆーねん!」


      「ホント?京、生クリーム好き?」


      「ん、もち」


      が作ってくれるなら何でもえぇとかゆえへんけど。
      ほんまにの手作りってだけで十分です。
      

      これでこいつ等がおらんかったらえぇねん。
      何で堕威くんがローソク立てとんねん。
      しかももしかして年の数だけ立てとんのとちゃう?
      そんなんしたらボコボコになるがな。


      「なぁなぁ、火ぃ付けへん?」


      「うん!じゃー薫くん電気消して?」


      「りょーかい」


      「なぁ、そーいや心夜はおらんの?」


      「今日は欠席やって。何や、みんなに祝ってほしかったーん?」


      「・・・堕威くん、前髪燃えとんで」


      「ぅわっちゃぁ!チュルチュルなってもーたわっ!」


      真っ暗な中にみんなの顔が浮かぶ。
      ちょっと異様な光景やな。


      ハッピーバースデーとか歌ってくれて。
      そら嬉しくないわけあらへんけど。
      

      やっぱ俺としてはと二人っきりで過ごしたいわけで。
      だって一応俺の生まれた日やん。    
      それを一番祝ってくれるんは好きな人であってほしい。


      大勢に祝ってもらえることは幸せやと思う。
      でもおめでとうの気持ちが分散されとぉ気ぃすんねん。
      他の奴と同じもん貰っても嬉しないねん。
      我が儘かもしらんけど。


      「京?ローソク消して?」


      「ん」


      この年になってローソク吹くんはずいんやけど。
      俺は一気にローソクを吹き消した。


      真っ暗になった部屋にパチパチ響く音。
      子供の頃やった誕生会を思い出した。


      「おめでとー!」


      「おおきに」


      「あんね、俺達すっげープレゼントあんだぜ!」


      「あぁー?さっさ渡せや」


      「その言い方ひどっ!」


      「京くん、年下は大事にせなあかんでー?」


      「年上労わってばっかで疲れとんねん」


      「労わられた覚えもあらへんけどな」


      「まぁまぁ・・・」


      「そだ、プレゼント!」


      「せやったせやった。ちょっと寝室と借りんで」


      「ちょ、堕威く・・ッ、どこ連れてくねん?!」


      「寝室〜」


      そういうとを引き摺るように寝室に入ってった。
      どこの世に人の彼女寝室に連れ込む奴がおんねん。
      しかも俺の部屋なんに・・・。


      に指一本でも触れたらシバくで、ほんまに。
      、警戒心あらへんからこーゆーとき心配やねんな。
      顔見知りやからって信頼でけへん世の中やで?
      何回ゆーても聞かん子やからなぁ・・・。


      つーかな、プレゼントって何やねん。
      寝室使ってまで用意するもんなんか?
      頼むから散らかさんでくれ。
      こないだ片付けたばっかやねん。


     





      待つこと50分。
      いい加減キレそーになる。

    
      何回も寝室のドア叩いとんねんけど誰も出てきぃひんし。
      たまぁーに中から4人の声が聞こえてくんねんけど。
      何やっとんねん。


      「あーけーろー!」


      ドンドンドンドンドンドン。
      心夜並の腕力でドアを連打する。
     
     
      「はいはいはいはい、京くんうっせーよ」


      「おまたせー」


      堕威くんと薫くんに手を引かれて出てきた
      一瞬目を疑った。


      「あ、の・・・京?」


      「綺麗やろー?」


      そう言いながらの肩に手を置く薫くん。
      後ろでメイクボックス持って笑う堕威くんと敏弥。
      何なん、急に・・・


      「ほな、俺等帰るから」


      「誕生日に邪魔してごめんなー」


      「おっじゃましましたー」


      そう言って帰っていく3人を止めることも出来ずに。
      玄関が閉まる音がして、はっと我に返った。


      言葉がなかなか出てきぃへん。
      何でも知っとぉつもりやったんに、こんな見たことあらへん。
      

      あぁ、誕生日やからやろか?
      誕生日やから女神でも降ってきたん?
      俺、日頃の行いがえぇからご褒美かなんかか?
      神様とか信じてへんねんけどな。


      「・・・京?」


      「・・・ゃ、あ・・・」


      「やっぱ・・・おかしい?」


      「え?ぃや、そーやなくて・・・」


      正直見惚れた。
      自分の惚れた女がここまで綺麗やったなんて。


      寝室から出てきたの姿。
      シンプルで真っ白なドレスに身を包んで。
      まるで・・・花嫁やんか。


      「あ、のね?このドレス、薫さんが着せてくれて・・・」


      「・・・メイク・・・」


      「あ、これは敏弥くんがやってくれて・・・」


      「・・・」


      「堕威くんが髪整えてくれて・・・」


      細い首に掛かる後れ毛。
      赤に近い茶色い髪が柔らかに揺れる。


      「・・・綺麗・・・」


      「・・・え・・・?」


      俺は思わず目の前のを抱きしめた。
      妙に心臓の音がうるさい。
      

      細っこい身体を包む柔らかな布。
      それが気持ちよくて、の胸に頬擦りしてみた。
      

      「えらい綺麗・・・」


      「ほ、んとに・・・?」


      「嘘吐いてどないすんねん」


      「でも・・・」


      「ほんま、花嫁さんみたいや」


      あいつ等これが誕生日プレゼントやってゆったよな?
      それって俺のもんにしてもえぇってことなん?
      都合よぉ解釈してまうんやけど。


      「なぁ、?」


      「なに?」


      誕生日プレゼント。
      ほんまにこんなん貰てもえぇんやろか?
      幸せすぎて死にそうや。


      「俺な、今自分のことで手ぇ一杯やねん」


      「・・・ん」


      「せやからのことだけ考える余裕とかあらへんねん」


      「・・・そんなの・・・」


      「それでも、手放したないねん」


      「そんなの・・・私だって同じだよ・・・っ」


      「手放したれんでごめんな?」


      「ううん・・・ッ!」


      「今はこれで精一杯やけどな、いつか・・・」


      「いつか?」


      「・・・結婚しよな?」


      水色をベースに綺麗に飾られた爪。
      こんな器用なこと出来んのは、多分心夜。
      

      俺はの左手をそっと取った。
      細くて頼りないけど、俺にとっては必要な手。
       

      少しだけ途惑う指先。
      俺は薬指にそっと口付けた。


      「・・・ぅん・・・ッ」


      「泣きぃや・・・」


      「泣いてない、もんっ」


      「はいはい」


      溢れる綺麗な涙。
      それを拭ってやることしか出来ひんけど。
      の為にできることなら何でもしたりたい。
      

      不安定やけど。
      確証のない未来やけど、とやったら一緒におれる。
      確実なもんなんか何一つやられへんかもしらんけど。
      それでも離されへんねん。


      何をなくしても。
      俺の手にはアンタだけが残ればそれでえぇ。

  
      「一個だけゆーてもえぇ?」

     
      「・・・?」


      「薫くんに肌見せんな」


      「・・・へ?」


      「堕威くんに髪触らせんな」


      「いゃ、でもそれは・・・」


      「敏弥なんかにメイクさせんな」


      「や、だって・・・」


      「心夜に爪の先も触らせんな」


      「・・・京、ヤキモチ?」


      俺のもんやから。
      他人に貸したげられるほど安いもんとちゃうねん。
      俺だけのもんやから、誰にも触らせん。


      「・・・売約済みのシール貼っとかなあかんな」


      「・・・見えるとこはやめてね?」


      「見えんと意味あらへんやろ」


      大して特別でもない2月16日。
      大切な未来が一つ増えた日。























      BE HAPPY・・・?

      ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

      ものっそ即席の夢となってしまいました(;´Д⊂)
      内容練る時間が無かったらこんな小説が出来ちゃいます、はい。
      いつもと大して変わらない?あぁ、そうかもしれません・・・(汗)

      とにかく!今日が全世界の人にとって素晴らしい日でありますように。
      ★☆HAPPY BIRTHDAY TO KYO☆★

      少しでもお気に召しましたら感想下さると嬉しいです!


      20050216   未邑拝



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