走って、走って、必死に走って。
          ふと振り返って立ち止まった時、
          其処にアナタがいる保証なんてどこにもない。
 















          鬼ごっこ












  

      

          最近、不安で不安で堪りません。
          原因は言わずと知れて瑠樺さんのこと。
          周知の通り、瑠樺さんはあんな性格。
          女に関しては来る者拒まず、去る者追わず、みたいな。
          瑠樺さんに想いを寄せる人は腐るほどいるわけで。
          私が彼女って位置にいるのも、何か奇跡みたい。
          とにかく、類稀なる俺様気質。
          王様どころか独裁者。
          「少しだけで良いから、私のこと見てくれませんか?」
          こんな陳腐な台詞じゃ38点。
          嗚呼・・・不安は募るばかりです。












          「るーかさんっ!今日、すっごい良い天気ですよ!」







          「言っとくけど、外出ねぇかんな」







          「へ?どーしてですか?!遊びましょうよ!!」







          「俺、ねみぃもん。寝る」

  









          はい、撃沈。 
          今日は久々のオフらしく、瑠樺さんは昨日の夜から泊まりに来てる。
          瑠樺さんは来るなり私をベッドに引きずり込んで・・・そのまま爆睡してました。
          此処はホテルでもなければ私は抱きマクラでもないんですけど、
          でもね、独りじゃない夜は嬉しかった。
          抱いてくれる人が居るって安心した。
          だから今夜はこのままで。
          明日はいっぱい構ってもらおう!って思ってたのに・・・







          疲れてるのは重々承知。
          ライブ続きでなかなかゆっくり寝てないってのも知ってる。
             だけどさ、少しくらい構ってくれてもよくないですか?!






 
          私は我が儘言っちゃいけないってことは解ってる。
          会えなくて辛いのは私だけじゃないって信じてるから。
          頑張ってる瑠樺さんを応援したげなきゃだよね。
          解ってる、そんなの解ってるよ。
          だけど・・・少しは私の気持ちに気付いてくれませんか?








          「ねぇ〜瑠樺さぁ〜ん・・・・」









          思いっきり甘えて腕を引いてみても効果なし。
          そんなに疲れてるのかな・・・・?
          二人なのに独りで居るみたいな変な感じ。
          会いたくて堪んなかったのは、私だけだったのかな・・・。
          瑠樺さんと一緒じゃなきゃ、テレビも雑誌もおもしろくないよ。
          傍にいてくれるだけで幸せだなんて絶対嘘だ。
          私を見てくれなきゃ、嫌だよ。








    
          090・・・
          瑠樺さんの耳元に置かれた携帯を鳴らしてみる。
          私が勝手に設定した着メロ、使ってくれてるんだ。
          一秒、二秒、三秒・・・
          ちょっと嬉しくなってしばらく聴いてみる。
          瑠樺さんは起きる気配もない。







      



          090・・・
          目覚まさないかな?
          留守電に接続されて、鳴らなくなった着メロ。
          メッセージ残しちゃおうかな。
          いつか気付いてくれるかな?いつでもいいから。
          耳元の携帯を何回鳴らしたって、瑠樺さんは起きない。
          別に良いんだけどね、ちょっとだけ寂しい。
  

































          どーしても許せない事ってありませんか?  
          怒りと不安は表裏一体で、それは深く、重い。
          「好き」が大きい分だけ、常に付きまとう不安。
          愛情に比例する不安から生じる怒りに、耐えられますか?
          正しい逃げ道を、知っていますか?
      







 
  
          090・・・
          もう一度瑠樺さんの携帯を鳴らそうとした瞬間。
          聞こえてきたのは聞き覚えのない着メロで。
      









            「・・・もしもし?」









  
          この世から携帯なんて消えてなくなれば良いのに、って思った。
          だっていらないじゃん、必要ないじゃん。
          その後に、瑠樺さんなんていらないって思った。
          私以外の人からの電話にワンコールで飛びつく瑠樺さんなんて見たくない。










          「あ?ソッチに来いっつー事?」








  
      
          瑠樺さん、電話の相手は誰ですか?
          私の電話よりももっと大切な人?
          私よりももっともっと大切な人なんですか?
          瑠樺さん、私、こんなの我慢出来ないよ・・・
          いらないのは瑠樺さんじゃない、瑠樺さんにとっての私だ。










          電話を切った瑠樺さんは、やっぱり私に気付いてなくて。
          ソファーに座りなおして、携帯をカーペットに放り投げた。
          カツンと音を立てて転がった携帯は、言いようのない不安。
          携帯のメッセージ、気付いてもらえないのかな。
      










          「?」








      
          「・・ば・・な・・・ぃで・・」








      
          「?どーしたんだよ?」








 
            「馴れ馴れしく呼ばないで下さい!!」







      




          ねぇ、瑠樺さん?
          私、そこらの都合の良い女じゃないよ?
          瑠樺さんの気まぐれに振り回されるのも、もう限界。
          気が向いたときだけ、優しく名前を呼ばないで。










          「何怒ってんだ?ブスになんぞ?」   







          「ッ!もういい!別れます!!」










            「は?何でそーゆー事になんだよ」









 
          ほらね、自分が原因だなんて少しも思ってない。
          別れたいわけじゃない、別れたくなんてないよ。
          だって大好きなんだもん、別れたいわけないじゃん。
          でもね、不安なんだよ。
          どうして二人の「好き」が同じじゃないんだろう。
          私、愛されてる自信なんてないよ。

 







     

          「もうやだぁ・・・瑠樺さん嫌いだもん・・」











          泣くつもりなんて無いのに、涙が止まんない。
          静かな部屋で、妙に私の泣き声だけが反響する。
          瑠樺さん、呆れてるのかな?
          それとも私、嫌われちゃったのかな?
          お願い、何か言ってよ・・・。










   

          「好きにしろよ」

 










    
          足元に転がった瑠樺さんの携帯。
          サブディスプレイには「留守録1件」の文字。
          聴かれる事のない声なんて、いっそ入れなきゃ良かった。
          下を向くと、携帯に悲しみが零れる。
          受け止めてなんか、もらえないのに。










      
          「逃げんだろ?さっさと逃げろよ」
      










          「瑠・・樺さ・・・?」











          「俺から逃げてぇんだろ?逃げろよ」












          涙で曇った部屋に充満する、瑠樺さんの声。
          魔法をかけられたかのように、足がすくんで動けない。
          ソファーに座ったまま向けられる真っ直ぐな視線が恐い。
          指を指された心臓が締め付けられる。
          瑠樺さんの指先が触れた場所から、熱が生まれる。


      




   
          逃げたい、逃げたい、逃げたい。
          もう限界だって思ったじゃない。
          不安で、不安で堪らないって思ったじゃない。 
          逃げなきゃ、今すぐ瑠樺さんから逃げなきゃ。
          もう一度掴まったら、今度こそ・・・








      







          「俺が逃がすわけねぇけどな」
















          逃げようと思った。
          逃げなきゃって思ったの。
          でも出来なかった。 
          瑠樺さんに背を向けることすら出来なかった。
          抱きしめられた身体が、瑠樺さんを拒めない。














          「やッ・・・離して下さ・・・・ッ」









    
          「離さねぇよ。離すわけねぇだろ」









    
      


          瑠樺さんが私の肩に顔を埋めると、不思議な安心感が生まれる。
          身を捩ってみても、瑠樺さんの身体は私をすっぽり包み込むほど大きくて。
          苦しくない拘束に押しつぶされそうになる。
      










 
  
          「電話・・・バカみたいにかけてんじゃねぇよ」










          「・・・起きてたんですか・・・?」










          「目が覚めたんだよ」











          だったら起きてくれてもいいじゃないですか!
          そう言って顔を上げた瞬間、瑠樺さんの胸に顔を押し付けられた。 
          なかなか止まってくれない涙が、瑠樺さんの胸に広がる。
          ねぇ、気付いてくれてたんですか?

    








          「お前の・・・の着メロは特別だろ」










          「だったら・・・どうして・・・・?」










          どうして出てくれないんですか?
          他の人の電話にはワンコールで出るのに。
          私の事なんて、どーでも良いんじゃないんですか?
          私はいらないんじゃないんですか?











 
 
          「が俺から離れるって、ありえねぇじゃん?」










 
          「・・・はい・・・・?」










      

          あぁ、解った。
          この人はどこまで俺様気質なんだろう。
          私になら、何しても平気だって思ってただよね。
          私になら、何しても受け止めてもらえるって思ってるんだよね。
          私が、瑠樺さんから離れないって自信があるんだ。
      







          いや、きっと少し違う。
          私が離れない自信じゃなくて、瑠樺さんが離さない自信があるんだ。
          つくづく会話のキャッチボールが出来ない人だけど。
          言葉も乱暴で、足りないんだけど。
          それでも離れがたいのは事実。












          「悪ぃけど俺、鬼ごっこ得意だから」











          不敵な笑みを称えた瑠樺さんは転がった携帯を拾い上げた。
          サブディスプレイにはもちろん「留守録1件」
      
      


            逃げては掴まって、逃げては掴まっての繰り返し。
          きっと私達はそうやってお互いの存在を確かめてる。
          私は走って、走って、必死に逃げる。
          瑠樺さんに捕まえてもらいたいから。













          留守録1件再生。


          「少しだけで良いから、私のこと見てくれませんか?」















          BE HAPPY・・・?


          ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

          いつもにましてダラダラ長う御座います(;´Д⊂)
          私の中で、瑠樺さんはこんなイメージっす。
          自分に絶対的自信がある方だと思います。


 
          20040203  未邑拝






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