俺を、愛して。 
























        無口な傷跡























      酷く頭が痛む。


      晴天の太陽がやたら眩しい。
      のことは考え事の7割を占めとって、考え事は頭の8割を占めとる。
      良いことでもあり悪いことでもあるこの状況。
      それが頭痛の種であることは明白。


      酷く、頭が痛む。


      「・・・別れよ」


      のことが嫌いになったわけやない。
      でももう、一緒にはおれん。


      傍におりたい。
      傍におってほしい。
      そう思っても叶わへんのが現状。


      寂しい思いをさせとる。
      そんな綺麗事やないねん。
      そんな綺麗な気持ちやない。


      「急に・・・ど、して?」


      「急やない・・・」


      「私・・・何かした?」


      「・・・ちゃうねん」


      「何が違うの?」


      大きな目いっぱいに涙を溜めた
      いっそのこと泣いてしまえばえぇのに。
      なして我慢して辛くなろうとすんねん。


      俺等が付き合い始めたのっていつやったっけ?
      えらい好きで好きで。
      好きって気持ちが溢れてどうしようもなかった。

  
      好きだとかゆえへんくて。
      初恋かって思うくらい余裕が無くて。


      横に座ったの顔見たら抑えが効かんよーになって。
      半ば無理矢理口付けた。
      顎を掴んで、俺と向き合わせて。
      

      目を閉じてくれたがえらい嬉しくて。
      受け入れてもらえたって思えた。
      好きやって思った。


      「の所為やなくて・・・もうあかんねん」


      「ねぇ薫・・・どうしちゃったの・・・?」


      「もうきっついねん、ほんまに・・・」


      告白できひんかった理由。
      ほんま中坊じみとって自分でも笑えてくんねんけど。
      告って駄目やったら友達にも戻れんよーになる。
      そう思うと恐くて動かれへんかった。


      もうが笑てくれへんかったらどうしようとか。
      この状態に満足しとるわけやなかったけど、壊す勇気もなかった。
      自分の臆病さに笑えてくる。


      「どーして・・・?悪いとこあったんなら直すから・・・ねぇ?」


      「悪いことなんか・・・」


      「じゃあ考えようよっ!どうしたらきつくないか考えよう?」


      告白して付き合うことになって。
      したら今度は失うんが恐くなった。
      いつか俺んこと嫌いになる日がくるかもしらん。
      いつか離れる日がくるかもしらん。
      不安で気が狂いそうになる。


      永遠なんてあらへん。
      始まりがあれば終わりもある。
      それは俺等にとっても例外ではないはずで。
      いつかくる『別れ』の不安に耐えられへんかった。


      ずっと一緒におりたい。
      ずっと傍におってほしい。
      手放したくない。


      辛くて流した涙を拭うのは俺であってほしい。
      嬉しくて溢れる笑顔を抱きしめるのは俺であってほしい。
      が全てを見せてくれるのは俺だけであってほしい。
      


      肥大していく独占欲にリミッターはなくて。
      いっそのこと気が狂ってしまえばえぇのに。
      気が狂ってしまえば、大声でが好きやって叫べるのに。
      は俺のもんやってわめき散らせるのに。


      「私のこと、もし嫌いじゃないなら一緒に考えよう?」


      「・・・・・・」


      「別れることだけが選択肢じゃないでしょう?」


      じゃあどうやったら安心できる?
      どうやったらこんな気持ちにならへんですむん?


      抱きしめてもキスしても、身体を重ねても安心できひん。
      俺ん中にが入ってくればくるほど不安になる。
      好きなのに、が恐い。
      好きすぎて恐くなる。


      どうしたらえぇか解らへんねん。
      繋ぎとめとく術が思い付かへん。
      自分の未来が巧いこと見えへんねん。
      上手に愛したりたいだけなのに。


      「ほんま・・・ごめん」


      「ねぇ、どうして・・・?」


      「・・・」


      「もしかして・・・好きな人、他にできた?」

 
      の細い指が俺の服の袖を掴む。
      指が震えとるのが解る。
      

      抱きしめたいけど絶対に出来ひん。
      真っ直ぐを見ることすら出来ひん。


      「・・・あぁ」


      「・・・ほ、んとに・・・?」


      「・・・あぁ」


      そんなわけあらへんやん。
      他に好きな女なんかおるわけない。
      以外の女に興味なんか持てへんよ。


      「嘘・・・だよ、ね?」


      「・・・嘘やない」


      「ど・・・して・・・?私のこと、嫌いになった・・・?」


      「・・・」


      「ねぇ、薫・・・」


      「もう・・・呼び捨てにせんといて」


      「・・・薫・・・」


      付き合いだしたとき、は俺んこと『薫さん』って呼びよった。
      俺はなんとなくそれが嫌で。
      よそよろしい感じがしたから。
       

      が俺んこと『薫』って呼び始めたのは、それからしばらくしてから。
      俺等が付き合い始めた証みたいなもんやった。
      もそう思てくれとったら嬉しいな。


      「好きな人って・・・誰?」


      「・・・」


      「言えない人なんだ・・・?」


      「・・・」


      好きな奴、お前しかおらんよ。
      他の女のこと考える暇なんかあらへんかった。
      

      「その人のこと、私より好き・・・?」


      「・・・」


      「薫のそういう優しさ、痛いだけだよ・・・」


      「・・・すまん」


      「・・・」


      「・・・もう、無理やねん」


      好きすぎて。
      これ以上一緒におったら心臓が壊れる。
      

      「・・・やだよ・・・」


      「・・・」


      「無理とか、言わないでよ・・・」


      「・・・」


      まだや。
      まだ全然足りひん。


      「ねぇ、お願い・・・何か言って?」


      「・・・すまん」


      「・・・薫・・・」


      まだ、まだ足りひん。
      もっと、もっともっと。


      「ねぇ薫・・・好きだよ?」


      「・・・」


      「好きだよ・・・っ!」


      もっと、もっともっともっと。
      そんなんじゃ全然足りひん。


      俺の態度で、俺の言葉で、を傷つけたい。


      心を深く抉って、深く深く。
      決して治ることのないくらい、深く。


      いつの間にか『好き』の信じ方が解らへんようになった。
      自分の気持ちばっかり大きなって、不安になる。
      自分の想いに押し潰されそうになる。
      同じ想いを求めてしまう。


      こんな不安定な関係、いつまでも続くわけあらへんやん。
      いつかくる別れが恐くて仕方あらへんかった。
      変わってまう気持ちをどうやったら繋ぎとめられる?
      答えが見つかれへん。


      「別れたくないよ・・・っ」


      「・・・」


      「好きだよ・・・大好きだよ・・・っ!」


      「・・・」


      「愛してるよ・・・」


      これ以上ないくらい、ん中に傷を残したい。
      一生消えることあらへん傷を。
      幾筋も切り刻んで、血が流れるまで切り刻んで。
      

      その傷を見るたび、俺を思い出して。


      一生、ん中から俺を消さんといて。
      例えば傷に触れた痛みでえぇから。
      例えば滲み出した血でえぇから。
      ん中に俺を刻み付けて。


      憎しみでえぇ。
      苦しみでえぇ。
      俺が与えたもん、全部忘れんといて。


      「・・・さよなら、や」


      もっともっと傷ついて。
      何度でも何度でも傷つけたる。
      その痛みに、その苦しみに、俺を重ねて。
      


      俺を、愛して。























      BE HAPPY・・・?


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      巧く愛すること、不器用に愛すること。
      間違いなんてないんだけど、正解さえもなくて。
      最後に手に残るものは、一体何なのでしょう。


      20050420   未邑拝




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