一緒にいたいと思うことは、オカシイ事ですか?
愛してほしいと思うことは、イケナイ事ですか?
アナタが私を欲しがる事、私がアナタを欲しがる事。
何かマチガッテますか?
異端
愛
もうどのくらいの時間が経ったのかな?
1ヶ月?2ヵ月?ずいぶん長い事ココにいる気がする。
視界を遮る真っ白な布、手首を戒める冷たい手錠。
朝か夜かを感じさせないのはきっとアナタの優しさ。
もう何度目かの繰り返される日常が、今日もアナタの声で始まる。
「おはよ」
ドアが開く音と一緒にアナタの声が聞こえてくる。
後ろ手に繋がれた両手が邪魔で、うまく起き上がれない。
身体を捩ってベッドのヘッドに寄り掛かると、上手に起きれたやん、とアナタが言った。
相変わらず視界は塞がれていて、視覚は無いに等しい。
朝なのか夜なのか、明るいのか暗いのか、それさえも解らない。
晴れているのか雲っているのか雨なのか、この狭い空間じゃ全部が不確か。
シアワセ。
「苺、食べよか?好きやろ?」
「・・・ぅん・・・・」
ギシっとベッドが軋むと甘酸っぱい苺の香りがした。
きっとアナタが洗った苺を持って、ベッドに腰を下ろしたんだと思う。
閉じた口を抉じ開けるように、苺の先端が唇に触れる。
私はそれを少しだけ啄ばんで、飲み込むことなく舌の上で転がした。
「?食べへんの?」
「・・・心夜ぁ・・・・」
「・・・駄々っ子やなぁ・・・」
そう言うと心夜の口内で潰した苺を口移しで私に流し込まれた。
苺と一緒に滑り込んでくる心夜の舌が信じられないくらい熱い。
グチャグチャになった苺は舌で喉の奥まで押しやられて。
私が飲み込んだのを確認すると心夜は唇を離した。
口の端から零れるピンク色の蜜を、心夜は舌で丁寧に舐め取った。
「ッはぁ・・・しん・・やぁ・・」
「一人じゃご飯も食べれへんの?」
「・・ごめんな・・さぃ・・」
「やっぱりは僕がおらんとダメやなぁ」
「いたッ・・!」
心夜の声がしたと思った瞬間、前髪を掴まれて激痛が走る。
耳元で心夜が囁くたび感じる心夜の吐息。
痛い筈なのにキモチイイ、ウレシイ、シアワセ。
髪の毛一本一本にも神経があるかのように、心夜の熱が伝わる。
ねぇ、今アナタはどんな顔をしていますか?
目を開けてみても閉じてみても私には何も見えないけど。
睫と布が擦れる感覚、真っ白な闇の中にアナタの姿を見る。
身体を揺らすたびに手首の鎖が冷たく鳴く。
手錠に擦れた手首は皮膚が剥けては血が流れて、妙に温かい。
アナタは包帯を捲いてくれるけど、そんなものいらない。
痛いままでいい、苦痛でいさせて。
それだけで、私は心夜のモノだって実感できるから。
「・・・僕が好き?」
「・・・好き・・・」
「こんなことされてるのに、僕が好きなの?」
「・・心夜が・・好き・・・」
ずっとこの真っ白な闇の中で過ごす事だって平気。
目なんて見えなくても平気、手だって使えなくても平気。
恐くなんて無い、辛くなんて無いよ。
大好きだから、心夜が大好きだから、大好きだから。
お願い、私を愛して。
心夜がお仕事の時は一人でお留守番。
慣れてしまえば障害物に当たりはするけど、大したことはなくて。
唯、アナタがいない。
私の音しかしない空間は何故か無性に恐くて。
今日もいつもと同じ、ベッドの上で丸くなってた。
数時間前まで心夜が寝ていた場所だと思うと、少し心が安らぐ。
ねぇ、はやく帰って来て?
そう思った瞬間、部屋のインターホンが鳴った。
頭だけを上げて音のするほうを向いてみる。
心夜ならインターホンなんて鳴らさない。
誰・・・?でもこの家に来る人、心夜以外思いつかないよ。
「・・・誰・・・・?」
インターホンの音が止まるとすぐに鍵を差し込む音が聞こえた。
鍵を回す音、そしてドアが開く音。
心夜・・・であって欲しい。
鍵を持ってる人なんだからきっと心夜なんだよね?
でもどうしてインターホン鳴らしたりするの?
ねぇ・・・誰・・・・?
「・・・やっと見つけた・・・!」
寝室のドアが開かれると同時に聴こえてきた声。
知ってる、撫でるように私の名前を呼ぶ声、知ってる。
でも、どうして?どうして此処に来るの?
私は上半身を少しだけ起こして、彼の方を向いてみる。
「・・だ・・・い・・くん・・・?」
堕威くんは、そうや、と言いながら私の元に走り寄ってきた。
堕威くんは私の身体を軽々と抱き上げると、ベッドの上に座らせた。
堕威くんはベッドの淵に座って私をぎゅっと抱きしめた。
昨日、心夜が座っていた場所。
数時間前まで心夜が寝ていた、その場所。
私と心夜しかいない、真っ白な空間だったはずなのに・・・・。
「ホンマ、無事で良かった・・・ッ!」
「堕威くん・・・どぅ・・して・・・?」
「大丈夫や、安心せぇ。酷い事したりせぇへんからな」
「・・・ゃ・・だ・・・・」
「可哀相に・・・コレ・・・心夜にされたん?すぐ外したるから」
「やぁ・・!やだッ・・・触んないでッ!」
目を覆う布に手を掛けられた瞬間、私は思わずそう叫んだ。
私が頭を振ると、堕威くんの手が引かれるのが解った。
私は堕威くんから離れるように、ベッドの上を後ずさる。
だって怖い。どうして?どうして・・・
「・・なして・・・?・・・どないしたん?」
「お願い・・・触んないで・・・ッ!」
「・・・心夜か・・・?心夜に脅されとんのやろ?!」
「違ッ・・・やだ・・・触んないでぇ!!」
堕威くんが私の肩を両手で揺さぶる。
両腕の使えない私は堕威くんの力通り身体を揺らすしかなくて。
いくら拒絶の言葉を叫んでみても堕威くんには届かない。
肩に食い込む堕威くんの指が怖い。
このままだと壊れてしまいそうで、壊されてしまいそうで、怖い。
この関係が壊されてしまいそうで、怖い。
「俺が・・・俺がちゃんと護ったるから・・・だから・・・・」
「・・・触んないで・・・どうして・・・どうしてこんな・・・」
「・・・・・・?」
「どうして・・・どうしてこんなことするの・・・?」
「・・・?お前何言うて・・・」
「・・どうして邪魔するの・・・ッ?」
どうして邪魔するの?
どうしてそっとしててくれないの?
可哀相?誰が?私が?こんなに幸せなのに?
目を、手首を、私の身体を戒めるものが外れてしまったら。
きっともう帰れない。
きっともう二度と今には戻れない。
きっともう二度と、心夜は私を見てくれない。
「幸せなのに・・・心夜といれて幸せなのに・・・!」
「・・・お前・・どうしたん・・・?」
「お願い、邪魔しないで・・・」
「こないなことされてどこが幸せなん?!」
ねぇ、堕威くん、幸せって何?
何も見えなくても、手錠に繋がれてても、此処から出れなくても、私は嬉しいの。
心夜以外の人を見るくらいなら、何も見えなくたって良い。
心夜が繋いでてくれるんだったら、両腕なんて使えなくて良い。
心夜がいてくれるんだったら、もう何処にも行きたくない。
心夜が愛してくれるなら、私は何にもいらないよ。
幸せなの、幸せなんだよ、とっても幸せなの。
だからお願い、私を自由になんかしないで。
「だから無駄やて言うたやん?」
「・・・心夜・・・・」
堕威くんが入ってきたドアから急に降ってきた声。
堕威くんは私が言うより先に、心夜の名前を呼んだ。
少し笑い混じりの心夜の声に堕威くんが反応する。
「お前、になにしたん?!」
「何もしてへんわ、失礼な」
「そんなわけないやろ!!」
「拒否られたからって僕にあたらんでくれる?」
「心夜ッ!!」
怒る堕威くんを無視して心夜がベッドに座る。
そのまま私を後ろから抱きかかえるように抱きしめた。
首筋に当たる心夜の唇に反応せずにはいられない。
心夜は私の耳を甘噛みしながら、ただいま、と囁いた。
私が擦れた声で、おかえりなさい、と言うとまた堕威くんの怒鳴り声が響いた。
「はな、好きで此処におんねんで?堕威くんにとやかく言われたない」
「せやけど・・ッ!!」
「スタジオでも言うたけどな、連れて帰るんは無理やで」
「オカシイ・・・心夜、お前変やで?!」
「じゃあ僕を好きなも変なん?そしたら変なを好きな堕威くんも変とちゃう?」
「お前何言うて・・・」
「でも堕威くんは諦めてな。は僕のこと好きやから」
心夜は後ろから私の鎖骨を人差し指でなぞっていく。
きっとそこには心夜のものだって痕がたくさん残ってる。
鬱血した印、カミソリで刻んだ印、ライターで焦げた印。
私が心夜を愛してるって印。
「私は・・・心夜が好き、だから・・・」
「な?は好きで此処におるって意味、解った?」
「心夜の傍にいたい、から・・・」
「"コレ"、堕威くんには渡さへんよ」
心夜はそう言うと私の顎を掴んで上を向かせ、そのまま噛み付くように口付けた。
少し出した舌を思いっきり噛まれると、口の中が鉄の味でいっぱいになる。
飲み込みきれなかった唾液が真っ赤に染まっては口の端から溢れる。
痛くなんてないよ、痛くなんてない。
もしこの感覚が痛いって言うんだったら、痛いって幸せな感覚。
「なんやねん・・・お前等オカシイで・・?!」
「それ、褒め言葉?」
最初は、唯、傍にいたかった。
心夜の傍で笑っていたかった。
でもそれじゃ足りなくなって。
心夜を私のモノにしたくなった、私を心夜のモノにしたくなった。
だからね、どうしたら良いのか考えたの。
あぁ、誰よりも心夜の傍にいればいいんだって思った。
最初と何にも変わってない、あの頃のまんまなんだよ。
唯、私は心夜のモノになったの。
「心夜・・・大好き・・・」
「だから何なん?」
「お願い・・・傍にいさせて・・・」
「ええよ」
ずっとこのままでいさせて、傍にいさせて。
何もいらない、心夜以外何にもいらないから、お願い。
私は心夜以外愛さないよ、絶対に愛さないって誓うから。
だからお願い、お願いだから・・・・
「心夜・・・私を・・・愛して・・・」
あの頃と変わったこと、私が心夜のモノになったこと。
あの頃と変わらないもの、心夜は私のモノにはならないこと。
私の全部を心夜にあげたっって、何も変わらない。
私の全部を捨てたって、何も変わらなかった。
ねぇ、私がアナタの為に出来ること、他に何かありますか?
もう捨てるものもあげるものも、何も持ってないけど。
それでもアナタが望むなら。
「お前等オカシイ・・・オカシイやんか・・・」
「どうして?」
「こんなん普通やない!狂っとんで?!」
「が僕を愛してる、それだけやで?」
一緒にいたいと思うことは、オカシイ事ですか?
愛してほしいと思うことは、イケナイ事ですか?
アナタが私を欲しがる事、私がアナタを欲しがる事。
何かマチガッテますか?
唯々、愛しいだけなのに。
BE HAPPY・・・?
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心夜って難しいですね・・・堕威くん友情出演。
こんな愛の形もありかなぁ〜と思って書いてみました。
求める方も、求められる方もね。
なんか・・・書いてて暗〜い気持ちになってきました(笑)
少しでもお気に召しましたら感想下さると嬉しいです。
20040326 未邑拝
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