ずっと一緒におれますように。
      もっとずっと、幸せになれますように。
























       に願いを































      願いは叶わんから願いって言うんやって。
      確かに祈っとるだけで願いが叶うなら世界平和も夢やないよな。
      夢は叶うんやなくて叶えるんやって。
      誰か忘れたけど、そう歌っとった人がおった。
      どれが本当なんやろか。


      多分、皆祈るだじゃ何も変わらんって知っとる。
      せやけど祈るのを止めんのは、何かが変わるって信じとるから。
      何かが変わるかもしれんって信じたいから。
      きっと、それも間違いやない。


      今日は、一段と星が眩しい。
      どれだけの願いが、あの星にかけられとるんやろか。



      「星がきれーい!見て見て、堕威!」


      「ぅおー!ほんまやなぁー!」


      「ねぇねぇ、あれが天の川ってやつかな?」


      「そうなんか?星がいっぱい集まっとるやつやんな?」


      「そうそう」



      星が綺麗やってから電話貰ったんはもう一時間も前のこと。
      部屋のベランダでボーっと煙草吸いよったときやった。
      電話を取るのが早いが俺がの姿を見つけるんが早いか。
      部屋の下で手を振るに笑いが零れた。


      それから近くの川辺をフラフラと散歩して。
      星明りの下でフワフワ揺れる白いスカートをぼんやり見よった。
      煙草の煙が夜に消える。
      


      「はい、堕威に問題です。今日は何の日でしょう?」


      「・・・七夕?」


      「正解」


      
      は突然振り返ってそう言った。
      七夕ってそんな特別な日やったっけ?
      短冊書いて笹の葉に吊るすようなイベントやなかったか?


   
      「七月七日はね、彦星と織姫が逢える年に一回の日なんだよ」


      「あー何か聞いたことある」


      「んでね、彦星と織姫はその日だけ皆の願いを叶えてくれるんだって」


      「なしてその日だけなん?」


      「さぁ?嬉しいからじゃない?」


      「何が?」

  
      「出会えたのが」


      「嬉しくってなして人の願いまで叶えたるん?」


      「自分が幸せだと人の幸せも願っちゃわない?」


      「あ、何かそれ解る気ぃする」



      前に薫くんに言われた。
      薫くん彼女おらへんのってしつこく聞いたことがある。
      おらんって言われたから、好きな奴おるんやったら協力したるって。
      嫌味とちゃくて親切心で言うたってんで?
      せやけど薫くんは怒り出して。
      幸せの押し売りは迷惑や、ボケー!ってな。


      人の幸せを願えるのは自分に余裕があるからかもしらん。
      幸せってえぇ響きやけど、結構身勝手な話かもな。
      

      たっだ単に自分の幸せひけらかしたいだけかもしらんな。
      ま、それに納得出来んのも、やっぱ幸せやからであって。
      周りの人間からしてみれば迷惑なんやろうなぁ。
      結構冷たい世の中や。



      「もし一個だけ願いが叶うなら、何お願いする?」



      ふいにがそう言った。
      月が出てへんから星がよりいっそう綺麗に見える。
      いつもは何の変哲もあらへん川なのに、今日はえらい綺麗。
      世界が明るく見えるのは、その所為なんかもしらん。


 
      「堕威はさ、どうしても叶えて貰いたい願い事って、ある?」



      川辺から見える景色はまさに夏色。
      これで蛍とか飛びよったら最高なんに。
      せやけどそれは無理やと思う。
      蛍は綺麗な水辺にしかおらんって聞いた。
      こんな空気の汚れた街じゃ生きられへんのやと思う。
      俺はの質問の答えを考えるフリしながら、水の流れを目で追った。



      「でもね、絶対に叶わないんだよ」



      はそう笑った。
      白いスカートが星に揺れる。



      「じゃあ祈る意味あらへんやん」


      「そうだね」


      「織姫と彦星が叶えてくれるんとちゃうんかい」


      「そんなのお伽話に決まってんじゃん」



      何やねんコイツ。
      さっきと言いよること逆やんけ。
      いや、俺かてほんまに叶えて思っとるわけとちゃうけど。
      夢見がちなの口からこんなん聞けるとは、正直思っとらんかった。


   
      「星はさ、遠いね」


      「遠い?」


      「織姫と彦星でさえ、年に一回しか逢えないんだよ?」


      「お前、今、お伽話や言うたやんか」


      「もぅ・・・堕威ってば夢ないなぁ・・・」



      こいつの口、糸で縫いつけたろか。
      言いたいことがさっぱり解らん。
      やけどこいつがこんな訳解らんこと出だすには訳があるはず。
      いや、多分やけど。
      

      確かには心夜並に人の話を聞かん。
      適当に相槌打ったくせに後になって聞いてへんって怒る。
      会話の中で十回に一回は突拍子もないこと言う。
      の脳内では繋がっとんのかもしらんけど俺には解らん。
      つくづく会話のキャッチボールが出来ん奴や。


      でも、いくら話が繋がっとらんでも、には思うところがあるわけで。
      この会話やって、突然降って湧いたわけとちゃうやろ。
      解ったりたいのは山々なんやけど、解らんもんは解らん。



      「願い事ってさ、いつまで有効だと思う?」


      「有効期限付きなん?」


      「願い事が星に届くのってさ、どのくらい時間かかるのかなぁ?」


      「人の質問に答えんかい」


      「ん?何?」


      「・・・何でもあらへん・・・」



      
      が人の話を聞かんのはいつものこと。
      俺は笑っての頭をクシャクシャと撫でた。



      「願い事が叶う頃ってさ、私達、どうなってるんだろうね」




      
      



      


      










      あ・・・・
























      解った・・・・





























      「お前って結構阿呆やな」



      「はぁ?!ちょっ・・・堕威?!」



      なんや、解ってもーたわ、俺。
      何か急にの考えとったことが伝わってきた。
      なんやろう・・・テレパシー?
      まぁ、そんなんとちゃうねんけど、あながちハズレでもないような。
      兎に角、解った。


      いっつも唐突過ぎんねん、は。
      思考回路の半分も教えんと話し出すからな。
      



      「意外に近いもんやで?星ってな」



      
      俺は歩いとった土手を滑り降りた。
      そのまま飛び込んだのは少し水温が低い、川。
      緩い流れが膝をすり抜けていく。



      水面に映るのは満天の星空。
      眩しいくらい光っとる天の川。
      



      、お前って結構阿呆やな。
      なーに不安がっとんねん。
      星に頼るほど、俺が信じられんのか?
      心外やなぁー。
      俺はこんなに好きなんに。


      両手で救い上げた水に星が映る。
      ゆらゆら揺れながら輝く星。



      「願い事あんねやろ?言うてみぃや」


      「願い事・・・」


      「叶えてほしいんやろ?」


      「うん・・・」



      が一番叶えてほしい願い事。
      が一番叶えたい願い事。
      そんなん俺と同じに決まっとる。
      

      
      「堕威と・・・ずーっと一緒にいれますように」



      俺は水辺におるの顔を引き寄せて唇を重ねた。
      額をくっつけて目を開けるとの視線とぶつかった。
      照れたように顔真っ赤にさして。
      俺は目を閉じて、さっきより少しだけ長く口付けた。
      遠い星に願いをかけるよりずっと現実的なこと。


      
      「コレ・・・願い事の報酬な」


      「ケチな織姫と彦星ね」


      「今年から有料になったらしいで」


      「どーして?」


      「金貯めて交通費にするんやて。毎日会えるようにな」


      「年に一回しか会えなかったのは、お金が無かったから?」


      「さぁな。遠い宇宙事情なん、俺には関係あらへんもん」



      の願いくらい俺が叶えたる。
      もしかしたら願うほどのことでもないのかもしらんな。
      

      何にせよ、こんなこと織姫と彦星に願ったら失礼やろ。
      こんな幸せな願い事しとんの、世界中探しても俺等だけかもな。
      織姫と彦星も嫉妬するんちゃう?


  
      「ねぇ、堕威の願い事は?」


      「あー・・・来年でえぇわ」


      「えー?今年の七夕は今年だけだよ?」


      「せやけど意味あらへんもん」


      「・・・そんなの・・・私一人馬鹿みたいじゃん・・」


      「せやなくてさ。同じ願い事してもいっしょやろ?」


      「え?」


      「の願い事が叶ったら、俺の願い事も叶うからえぇねん」


      「・・・報酬詐欺みたいだよね・・・」


      「阿呆」



      見上げた空には星、見下ろした水面にも星。
      星がこんな輝けるんは、いろんな願いがかけられとるからかもしらん。
      純粋で綺麗な願い事のおかげで、こんな眩しいんかもしらん。
      こんな眩しい夜やったら、願い事の一つも叶いそうやん。
      奇跡みたいな話やけどな。


      
      「なぁ、オフ取れたらさ、海行かへん?」


      「どーして海?」


      「星が綺麗に見えそうやん」


      「星見るなら海より山じゃないの?」


      「あ、ほんまやな」


      「星、見たいの?」


      「は見たない?」


      「私ね、山より綺麗に星が見える場所知ってるよ」


      「ほんまに?じゃそこ行こうや」


      「良いよ。今から行こ?」


      「はぁ?そんな近い場所なん?」


      「ぅーん・・・徒歩十五分ってとこかな?」


      「どこやねん」


      「堕威の家のベランダ」


      「・・・えらいありがたみある場所やん」


      「願い事、叶いそうでしょ?」


      「奇跡でも起きればな」



      
      ずっと一緒におれますように。
      もっとずっと、幸せになれますように。
      明日も明後日も明々後日もずっとずっとずーっと。
      星にかけた誓いのような、願い。



























      BE HAPPY・・・?


      ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

      こんな話だって書けるんだそーって主張してみたり(笑)
      私の地元、七夕の里なんですよ。だから七夕橋とか七夕神社とかあるんです。
      そこを見て急にこのお話が脳内に降臨してきました。だから時期遅れな七夕話。
      来年まで保存しとこうかと思ったけど、来年までこのサイトがある保証もないですしね(笑)


      少しでもお気に召しましたら、感想下さると嬉しいです★



      20040819   未邑拝




SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送