規定された愛情の中で、僕等はどうしようもなく異端。
      歪みに歪んだ幻想に投影された拭い切れない想い。
      全てを振り切れない君は、僕を愛してる。




















      歪んだ愛に歪む歪んだココロ




















      薄暗い部屋で君を待つ。
      玄関、そこから続く廊下、ドアを隔てたリビング。
      電気を消して、無駄に明るい月を主張させる。
      






      開いたままの雑誌。
      飲み終えた紅茶のカップに今日のを想う。 
      一人で何処行ってんのさ?
      それとも誰かと?
      そう考えただけでも狂いそうになる。
      目が痛くなる月明かりに、の影を見た。


















      しばらくするとが帰って来た。
      鍵を差し込み、そして回す音。
      ドアノブを回すけど・・・開くわけないじゃん。
      もう一度、鍵を差し込み、そして回す音。
      驚いてんの?恐い?
      僕が先に帰ってるなんて夢にも思ってないんでしょ?
      




      
      
      廊下を歩く音に恐怖が滲む。
      電気も点けれず、携帯の明かりだけでリピングのドアを開けるを想像する。
      キィと小さな音を立てて開かれたリビングのドア。
      そして恐る恐るこっちを覗く
      ほら、思ったとおり。
      の事なら何だってわかる。
      でもさ、見知らぬ侵入者と僕、にとって恐いのはどっち?









      「お帰り・・・・・・」








      「ゆ・・・結良・・・さ・・ん・?」









      そう、と答えてを手招く。
      は僕を前に、絶対逆らえないはず。
      そういう風に躾けたのは、誰でもないこの僕だから。
      は下を向いたまま僕に近付いてくる。
      まるでマリオネット。
      僕はの糸を手繰り寄せる傀儡子。
      






      
      壁に寄りかかって座った僕の前に立った
      小刻みに震えてる肩。
      僕が恐い?
      少し赤みがかった髪も、この部屋じゃ漆黒に見える。
      もしかして髪型変えた?
      僕に内緒で勝手に?どうしてさ?









      僕はの細い腕を力任せに引き、薄っぺらな身体ごと抱き寄せた。
      きゃっ!と小さな声を上げて、僕の腕に納まる。
      流れるような髪を手で梳くと、僕の知らないシャンプーの香り。
      きつく抱きしめると誰のものか解らない煙草の匂い。
      たった一日でを支配する、僕以外のもの。
      許せないよね。








      「結良さん・・ごめ・・・・・」






 
      「家から出るなって、言った・・よね?」







      「ち、違ッ・・・・あの・・・・」







      「何さ?言い訳?」








      
      綺麗に整った後ろ髪を掴んで、無理矢理上を向かせる。
      突然の衝撃にはきつく目を閉じて耐える。
      痛い?どれくらい痛い?
      傷つけられた僕の心と、どっちが痛い?







      苦痛に歪んだの目からは今にも涙が溢れそう。
      それを丁寧に舌で舐めながら、優しくキスを落とす。
      瞼、目尻、そして頬。
      輪郭をなぞるように舌を這わせる。
      の声が零れるのを確認しながら、細い首筋に痕を残す。
      幾重にも重なった紅い印と歯型。
      痛い?苦しい?・・・それとも気持ちイイ?











      「ッ・・・やぁ・・・・ッ・・」








      「躾け直し、だね」
 








  
      反論しようとしたの口を自分のそれで塞ぐ。
      歯列をなぞって深く舌を絡めて。 
      漏れる息も滴る唾液さえも勿体なくて、何度も何度も深く口付けた。








      月は我がもの顔で闇夜を切り裂く。
      事実だけが鈍色に輝き、真実は翳り出す。
      どっちが事実でどっちが真実なのか。
      考えるだけ無駄な低い知能テスト。
      答えが解ったとこで、息を吹き返すものは何もない。
      道しるべの月は、遠すぎる。





















   

      渇いた空気が室内に充満する。
      開けたままのカーテンを刺す月明かり。
      二人きりの空間で、唯一邪魔なもの。










      「やだ・・・ッ!や・・・ッ来ないで!!」








      「お仕置きだって言ってるじゃん」










      僕は逃げるの髪を掴んでそのまま床に引きずり倒した。
      ガツンと鈍い音を立てて、が床へと崩れる。 
      この期に及んで抵抗を止めないは少し滑稽。 
      涙は筋を作っては床へ落ちる。 
      滲んだ瞳に僕が映る。









      「やッ・・・お願・・・許し・・・・ッ!!」







      「許さない」







      「いやッ!ゆぅ・・・結良さ・・ッ!」









      泣き叫ぶの頬を何度も殴る。
      全く自分の立場が解ってないさ?
      憎くてぶつんじゃない、愛しくて堪らないから。
      力任せに殴られた頬は赤く腫れ、口の端から鮮血が溢れる。
      滴る血液ごと唇に舌を這わせては、飲み込むようにキスを繰り返す。
      歯を一本ずつ確かめるように舌を甘噛みしては絡め、深く口内を犯す。








      そんなに感じてんの?
      目は虚ろで僕しか見えてない。
      赤い舌を泳がせて乱れる君はとっても綺麗。
      







      頭の上で押さえつけた左腕の袖を、捲り上げる。
      細くて白い腕に無数に残る傷痕。
      深く浅く縦に横に斜めに。
      僕の愛でを抉った痕。
      僕はその傷痕をそっと指でなぞり、痛みを重ね合わせる。
      の痛みを想っては僕の痛みを思い出す。
      そしてまだ塞ぎきってない傷に深く爪を食い込ませた。
      血が、滲む。









      「あッ!痛・・ッ・・・結良さ・・・!」








      「言い付け、守れなかった罰」








      僕は握り締めた果物ナイフを、の肌にあてがった。
      ゆっくりと、だけど力を込めて引く。
      ぱっくりと開いた線。
      白?ピンク?どっちつかずの色をした、脂肪、肉。
      僕の侵入を拒むかのように朱く朱く溢れ出す、血。
      流れ出すそれは白い腕を、床を、僕の目の前を真っ赤に染め上げる。
      の叫び声は愛を囁く甘い声。
      もっと泣いて?もっと鳴いて?







  
      「ぃやぁぁ!ぃたッ・・・やだぁ!!」







      「、綺麗」






    
      「ゆぅ・・・さ・ッ・・もぅ・・許しッ!!」






  
      「ダメ」










      手首の縫い目にそって何度も何度も。
      繰り帰し押し切る愛情。溢れる鮮血はの愛情。
      解ってる、は僕が好きなんでしょ?
      だから言い付け破って僕の気を引こうとして。
      はこうなる事を望んでたんだよね?
      ねぇ、そんなに僕が好き?どのくらい好き?
      僕の‘好き’とどっちが‘好き’だろうね?
      








      月が酷く明るい。
      部屋を満たした淡い光は、濡れたの声と共鳴する。
      静かな湖面に広がる波紋のような感情。
      それは愛情なのかそれとも・・・
      







      止まることのない手首を濡らす血液に、そっと口付ける。
      甘い、蜂蜜みたいな味。
      僕は舐め取るようにそれに舌をつけた。








      「、好きだよ」







      「・・・っ・・・はぁ・・・ッ」








      「・・・愛してるから・・」







  
      「・・・ゆぅら・・さん・・・・」










      
      空が、揺らめく。
      夜の創造主であるかのような月が、空を漂う。
      全ては正しく事実で、真実に成り得ない事象。
      月の光に翳り出すのは更なる影。
      隠された僕の心。
      





 
      を家に閉じ込めて誰の目にも触れさせないように。
      最初はそれだけで幸せだった。
      が傍にいてくれるだけで幸せだった。
      いつからだろう、それだけじゃ我慢出来なくなって。
      を支配する全てが僕であって欲しいと思った。
      僕だけを見て、僕だけを感じて、僕の事だけを考えて。
      空間じゃない、世界から遮断してしまいたかった。
      僕だけのものに、してしまいたい。
      僕だけのものに。
      僕だけを見て、僕だけを感じて、僕の事だけを考える。
      僕だけの、可愛い人形に、してしまいたい。








      僕は小さな錠剤を一錠、ピルケースから取り出した。
      真っ白で小さなその薬に見える未来に僕はほくそ笑む。
      僕はそれを口に含み、そのままの口へと流し込んだ。
      目を見開いて、異物の進入に驚く
      首を振って逃れようとするの頭を強く押さえつける。
      そのまま舌を使って喉の奥へと押し込んだ。
      







      「な・・何・・・?」







      



      「幸せになれる薬」









  
      「ふざけないで・・・・ッ!」









  
      「本気だけど?」












      「ッ・・・・結良さ・・・・・」













      「僕が幸せにしてあげる」














 
 
      規定された愛情の中で、僕等はどうしようもなく異端。
      歪みに歪んだ幻想に投影された拭い切れない想い。
      黒と赤に塗り込められた世界で、君だけが綺麗。
      傍に居て、もっと、ずっと、僕の傍に居て。
      幸せにしてあげるから、もっと、ずっと。
      僕で満たしてあげるから、もっと、ずっと。
      全てを振り切れない君は、僕を愛してる。

































      BE HAPPY・・・?

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      この話の初期タイトル見た人、どのくらいいますか?
      最初のタイトル長すぎたのでさっき日本語化してみました!
      自分がまさか結良さん夢を描く事になるとは思いませんでした(笑)
      もしかしたら続く、かも?
      こんな暗い話でも楽しいと言ってくれる方がもしいらっしゃたら!
      薬漬けになる話を書きたいと思います(死)

      この話は大好きな虎に捧げます。

     
      20040209  未邑拝




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