価値のない命なら、簡単に殺せるのに。
価値のない命なら。
道徳性
ぼぉっとしてたら、いつの間にか朝方になってた。
でも時計を見て、そんな長い時間経ったわけじゃないことを知る。
半袖から出た腕がやけに冷える。
多分、昼間ものすごく天気が良い所為だと思う。
雲は気温を閉じ込める役目をするって聞いたことがある。
だから、雲の無い日は太陽が出るまで寒いんだって。
ちゃんと秋がきてるんだなって思った。
なんとなく点けてたテレビから流れる倫理番組。
重苦しいから朝からこんなのやんないでほしい。
馬鹿馬鹿しい。
9月も終わりの所為か、日が昇るのが遅い。
ゆっくり昇る太陽が、カーテンを紅く染める。
「・・・はぁ。」
溜息と同時にテレビから聞こえてきた言葉。
俺はなんとなく、テレビに目を向けた。
クォリティー・オブ・ライフ
― 生命の質 ―
「くだんねぇー・・・」
手元にあったリモコンでテレビを消した。
一気に静寂で満たされた室内。
吐息が二つ、静かに響く。
「・・・と、しゃ?」
後ろで寝てたが、眠そうに声をあげた。
寒い所為か、小さな身体を丸めてる。
「起こした?」
「・・・ぅうん。」
「そ。」
は冷たい床に頭を押し付けた。
床に溜まった冷気がの肌を刺す。
「・・・テレビ?」
「ん。」
そっか、っては目を閉じた。
抱きかかえられた膝が真っ白に見えた。
昨日の情事を喚起させるような身体。
熱こそないにせよ、太腿には乾いた精液。
顔には幾筋もの涙の跡。
滴った体液が床に白く乾いてる。
の傍に座りなおす。
ぐったりと目を閉じて動こうとはしない。
その冷えた頬を指でなぞってみた。
「ねぇ、?」
「・・・」
「命に価値はあると思う?」
が重い目蓋を押し上げた。
普通より薄い茶色の綺麗な眼球。
その中に、歪んだ俺が映る。
「俺達の命に、価値があると思う?」
服を脱がせたのは、逃がさない為。
首輪をしたのは、独占欲を満たす為。
俺はを、この部屋に押し込めてる。
数週間前からずっと、ずっと。
にあげた首輪は人間用っていうより、犬用。
煤けた赤色をした皮製の首輪。
それに繋がる長い鎖は部屋の真ん中の柱に括り付けた。
どこにいても、が見えるね。
「・・・私の命にも、価値はあるの?」
そんな真っ直ぐな目で俺を見ないで。
一人だけ綺麗なままでいようなんて許さないよ。
一緒に堕ちてくれなきゃ。
首輪の鎖を強く引っ張る。
痛みに歪んだ顔に舌を這わせる。
「望まれる命と望まれない命ってあるのかな?」
「・・・っ」
「望まれない命ってどんなんだろーね?」
全ての命に価値があるとは思わない。
でも、全ての命に価値がないとも思わない。
きっと命にはそれに相応しい価値がある。
望まれる命と望まれない命。
一体誰に望まれて、誰に望まれないのかな。
俺はにされ望まれてれば、それで良いよ。
「俺の命、は望んでくれる?」
の秘処を指でなぞる。
昨日の余韻が残るそこはまだ柔らかくて。
淫らに口を開けて、俺の指を飲み込もうとする。
「ぁ・・・っ」
二本の指で浅いところを掻き回す。
奥の方から、俺が吐き出した精液が流れ出す。
の内部の熱と溶け合って生温い。
腕に力を込めてぐっと奥まで指を入れる。
収縮しながら指先から徐々に締め付けてくる。
幾度となく犯したこの身体。
俺の指の動かし方さえも染み付いてる。
俺を拒むことなんか出来るはずがない。
「んぁ、ぁ、あぁ・・・」
がカリカリと床に爪を立てる。
快楽に従順な身体。
命の価値を他人の中に見いだしたい。
それを投影した誰かを愛することで、自己愛に浸れるから。
誰かに愛されることで自分の価値を計る。
きっとそれが一番簡単な方法。
でももしそうなら、価値が無い人間なんていない。
誰も愛さず、誰からも愛されない人間なんているのかな。
人間的な生活をしてれば、そんな人間いないんじゃないかな。
それに気付かない人間はたくさんいるだろうけど。
それに気付きたがらない被害妄想じみた人間も同じ。
「ゃ、ぁ・・・ぁ、あぁ・・・」
もどかしい気持ちを押し付けるように、指を抜き差しする。
わざとグチュグチュと粘着質な音を立てる。
奥から流れる昨日の精液と溢れる愛液。
混ざり合ったそれは乾いた床に雫を垂らす。
「っあ・・・と、ゃぁ・・・」
うつ伏せに寝かせ、脚を開かせる。
脚の付け根に体重をかけて、無理矢理に。
割り開いた脚の間に身体を入れ、閉じることを許さない。
指は入れたまま、中心の突起を舌で愛撫する。
赤く充血したそれはの性感帯。
「やぁっ・・・ぁ、んん・・・っ」
濡れた突起に軽く歯を立てる。
甘い声に比例して指への締め付けが強くなる。
溢れる愛液で手の平までヌルヌルになる。
「ねぇ、俺の命に価値はある?」
指を引き抜いての唇をなぞる。
濡れた唇と唇が触れ合いそうで触れ合わない距離。
の熱い息が俺の疑問を包み込む。
涙が伝う瞳。
俺に価値なんてあるわけない。
そう言ってるように見えた。
毎日毎日欲望のままにを犯す。
嫌がる声も叫ぶ声も喘ぐ声も、どれも大好き。
大好き。
「ゃ・・・んあぁっ!」
腰を抱えて、高い位置から自身を挿入する。
赤く濡れた口が俺のを飲み込んでいくとこが見える。
体重をかけて、少しずつ押し込んでいく。
小さい口はめいっぱいに拡がって、酷く淫ら。
「ぅ、ぁ・・・くるし・・・っ!」
全部を飲み込んだソコはヌルヌル。
繋がった部分を擦りつけると、ニチャニチャと音がする。
俺の抱き方に慣れた身体は素直に反応してくれる。
「んぁっ・・・ぁ、あぁ・・・っ」
自身の先端で奥をぐりぐりと突く。
その度に投げ出された足がぴくぴくと痙攣する。
欲望のままに激しく律動する。
中身ごとひっぱり出して、奥まで捻じ込む。
その繰り返し。
「あぁっ・・・ん、ゃ、ぁ・・・あぁ・・・ッ」
の命にも価値があるのかな。
の命は望まれる命なのかな。
「・・・死んじゃえよ・・・っ」
の命に価値なんてなければいい。
の命が誰にも望まれてなければいい。
生まれた価値も、生きる価値もなければいい。
世界中から虐げられた命だったらいい。
そうだったら、どれだけよかっただろ。
「ぅ・・・ぁくっ・・・と、ゃ・・・?」
真っ赤な首輪ごと細い首に手をかける。
喉の真ん中に置いた両親指に力を込める。
首輪がの首に食い込んでいく。
見開いた大きな目から涙が零れる。
震える唇から唾液が流れる。
首を締めたら、の中もキュッと締まった。
急な締め付けに、痛いくらいの快感が溢れ出す。
俺はの首を締めたまんま、律動を再開した。
「っ・・・ぁ・・・」
このまま首を締めて殺してしまいたい。
俺の手の中で永遠に眠らせてあげたい。
俺の手で、死なせてあげたい。
死んだら俺のもんになるでしょ?
死んだら俺以外のもんになることはないでしょ?
死んだらずっと俺の傍にいてくれるでしょ?
殺してしまいたい。
「んん・・・ぁ・・・ッ!」
の内部がキツク俺を締め上げる。
弾けそうな欲望が身体中を駆け巡る。
ギリギリまで抜いて、最奥まで突き上げる。
獣より獣らしく、必死で腰を打ちつける。
獣より獣以上に、自分の快感を追い求める。
「・・・・・・ッ」
いっそう親指に力を込めた瞬間。
の一番奥に、精を吐き出した。
それは酷く無様な行為。
正しいことなのに、間違いだらけ。
正しいことなはずなのに。
「・・・・・・」
酷く白い顔に手を添える。
失神したの唇に、自分のそれを重ねた。
生を望まない人工呼吸。
「・・・死んじゃえよ・・・」
の命に価値なんかなかったら良かったのに。
価値のない命なら、さっさと殺してしまえたのに。
もしが歴史上に残る大犯罪者だとする。
何人もの罪のない人を殺めてたとする。
それで罪の意識なんかも微塵もなくて。
この世のゴミだっつって死刑判決なんかくらっちゃって。
世界中の誰に疎ましく思われてても、俺にとっては価値ある命。
どんな醜い犯罪者だろうが、俺にとっては必要な人間。
世界中がの敵だとしても、俺だけは味方になるよ。
世界中の誰の命よりも、価値があるんだ。
「・・・・・・」
殺したら、俺だけのもんに出来るのに。
死んだら、俺だけのもんに出来るのに。
価値のない命なら、簡単に殺せるのに。
価値のない命なら。
「・・・愛してるよ。」
繋いだ鎖がチャラっと音を立てた。
この鎖も、いつか錆びて朽ちる日が来るのかな?
ねぇ、君を愛した俺の命にも、価値はありますか?
君を殺したいくらい愛してる俺にも、価値はありますか?
BE HAPPY・・・?
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果たしてこれが道徳性なのかは不明なのですが・・・(汗)
命に価値がある云々の前に、監禁は犯罪です!
お気に召しましたら感想下さるとうれしいです(/∀\〃)
200501001 未邑拝
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