俺の腕の中で飛び回る鳥。
      籠が嫌いなあんたやから。























      YOU AND CHAIN
























      俺はが好き。
      も俺が好き。


      それで成り立つのが恋愛。
      簡単な方程式はこの世のバイブル。
      信じて疑わない方式。
      

      「ー?」


      「んー?なぁーにー?」


      楽屋に響く、堕威がを呼ぶ声。
      大して気のない声で返事をする
      一瞬身体が強張る。


      「こないだゆーとったチケなんやけど・・・」


      「あれ、無理しなくて良いよ?」


      「欲しないん?」


      「そりゃ欲しいけど・・・」


      こないだゆーとったチケって何?
      堕威と二人でどっか行くん?
      俺、そんな話全く知らんのやけど。


      「コレ、なーんだ?」


      堕威が手を上に上げて、二枚の紙を揺らす。
      俺は気付かれんよーに、雑誌から目を離した。
      少し離れた場所からは、何のチケットか確認出来へんかった。


      「・・・うそー?!」


      「ホ・ン・ト」


      「なんでなんで?!どーやって?!」


      「の為やったらかーるいもんやで?」


      嬉しそうにはしゃぐの姿。
      それを少し離れたソファーから見る。
      どうしようもなく虚しい気持ちになる。


      「えぇー二人でどっか行くのー?!」


      「だぁー耳元ででっかい声出すな、馬鹿敏弥!」


      「ひっでー!」


      騒ぐ二人に飛び込んだ敏弥。
      堕威にくっ付きながらチケットを覗き込んどる。


      「堕威くんと遊び行くくらいなら、俺の買い物付き合ってよー」


      「オタクショップ行かない・・・?」


      「が代わりになってくれるなら」


      「・・・絶対行かない」


      「嘘だってば!」


      敏弥の大きな手がの細い腕を掴む。
      怒りながら笑う、可愛い笑顔。
      それを見て笑う、敏弥と堕威。


      「お前等うっさいねん!」


      「ぇー・・・」


      「えーやないわ!詞ぃ考えとんやから静かにせぇや!」


      詞を考えとるらしい京くんが怒鳴った。
      俺の前におんねんけど、寝とるよーにしか見えへんかった。
      絶対眠いで機嫌悪いだけやろな。


      「ぁの・・・ごめんね?」


      「ぁーもー・・・そんな顔せんでえぇって」


      「や、でも・・・」


      「うっさいのは堕威くんと敏弥だけやし」


      意地悪そうな顔で二人を見る京くん。
      口の端から覗く八重歯が妙に計画的。
      ソファーに伸ばした肢体が妙に確信的。


      視線が定まらへん。
      雑誌の内容なんか何一つ理解出来へんくて。
      唯、それを覚られるような無様な真似は出来ひんと思った。


      「なんもゆわへんの?」


      ふいに金色の髪が頬を撫でた。
      京くんとは違う、長めのしなやかな髪は心夜のもの。
      背もたれに肘を置き、俺の耳元に口を寄せる。
      誰にも聞かれへんよーにって配慮らしい。


      「彼女が鈍感なら彼氏も鈍感やな」


      「・・・なんが」


      「あんたがそんなんやったら貰ってくで?」


      「・・・」


      「自分のもんやって高括って後悔せんよーにな」


      振り向くと不敵な笑みを浮かべた心夜。
      耳元を掠めた声が鼓膜に残る。
      全部、掻き出したくなる。


      前を向けば無防備な笑顔。
      その目は俺を見てない。
      でも、それは苦痛ではない。


      間違っても嫉妬なんか出来ひん。
      そんな無様な真似、誰にも見せたない。
      気丈やないと、あんたを飼い馴らせんやろ?


      「なぁー、折角チケ取ったし、明日行くやろ?」


      「うん!堕威好きー!」


      「、俺は俺は?」


      「んー・・・ちょっと好き」


      悪戯っ子みたいに横目で敏弥を見る
      絶えない笑い声、絶えない笑顔。
      

      が一番好きなんは俺やろ?
      だって俺が一番好きなんはやもん。
      

      雑誌のページをめくると鳥が飛びよぉ写真があった。
      車の宣伝かなんかやろか。
      茶色の地面と長くてでかい灰色の道。
      そして、あんま青々してへん、灰色が混ざったような青。
      そこを一羽の鳥が飛んどった。


      多分、大した意味もない鳥。
      広い空を表現するための背景の一部やと思う。
      でも、それが妙に気になった。


      「堕威くんも敏弥も危険やでー?」


      「うっわ・・・京くんがソレ言う?」


      「お前に比べたら百倍まともな男やろ、長野産」


      「長野って言わないでよー」


      きっと嫉妬心。
      鳥が飛ぶ灰青の空は俺の心の色に似とる。
      

      京くんが体勢を変えて、ソファーにうつ伏せになった。
      に顔を向けて見上げる仕草。
      不覚にも可愛ぇと思ってしもた。


      「一番まともなんは僕やろ」


      「黙れ、グレイ星人」


      「標準やし」


      「お前が標準なら世の中デブばっかやな」


      寝転がった京くんの横に腰掛けて話に入る心夜。
      さっきの不敵な笑みは見間違いかと思える冷静顔。
      俺にゆーた言葉の深さが伺える。


      別にが俺のもんやと思っとーわけやない。
      離れんって高括っとーわけでもない。
      やけど不安なわけでもない。


      嫉妬する。
      空は相変わらず灰青。
      飛ぶ鳥がおるから許される色。


      「


      大空が似合うあんたやから。
      好きなだけ自由に飛びまわればえぇと思う。
      別に籠ん中に閉じ込めておきたいとは思わん。


      でも、ときどき思い出させてやる。
      飼い主は誰なんかってことに。
      自由奔放なは意外に従順。
      構って欲しいのはあんたの方やから。


      「・・・薫?」


      俺の声に反応する
      その大きな瞳に俺が映る。
      

      室内の空気がなんとなく張り詰める。
      皆の視線が俺に集中しとるように感じる。
      

      「こっち来てみぃ?」


      敏弥の手をすり抜けてこっちに来る。
      堕威くんの、京くんの、心夜の視線をすり抜けて。
      

      縛られることは好かん。
      でも縛られてへんともの足りひん。
      我が儘で手に負えへん。
      でもそこが一番可愛いとこ。


      「・・・薫?」


      傍に来たの髪を優しく梳いてやる。
      毎日のトリートメントは絶大な効果があるらしい。
      カラーリングしたにしては綺麗な髪。
      

      「明日、堕威と遊び行くん?」


      そのままの頬を手でなぞる。
      はしゃぎすぎで桃色に染まった頬。
      俺の大きくはない手の中に収まる小さな顔。


      「うん・・・駄目?」


      「別に構えへんよ?」


      「ほんと?」


      「あぁ。好きなだけ遊んでもらいーや」


      越しに見える心夜の顔。
      それを見ると勝ち誇った笑みが零れる。


      なぁ、俺から盗ったつもりなん?
      そんなんじゃ全然無理やって。
      お前等にが手に負えるわけがない。
      そんな簡単な女とちゃうねん。


      「なぁ、堕威」


      「ぁ、ん?」


      「昼は貸したるけど、夜には返してな?」


      左手での髪をかき上げる。
      そして、白い首筋に唇を落とした。


      きつくきつく吸い付いて。
      紅く、俺の跡を残した。
      鳥篭の代わりに。


      「っ・・・か、ぉるっ!」


      「明日・・・堕威と楽しんできぃや?」


      空が自由だって誰が決めた?
      空が空やって、一体誰が確かめたん?
      空には果てがあって、空を包む空がある。
      結局、自由は唯の幻想。


      雑誌を閉じると、裏表紙にあの鳥がおった。
      自由に空を飛びよったと思っとった鳥。
      それは鳥篭に入って、人間に抱かれとった。
      これから車の中に積まれるところらしい。
      

      後部座席が広い車。
      きっと鳥は、この中に入れられるんやろう。
      そう思うと、なんとなく笑いが出てきた。


      「・・・あんた、腹黒やな」


      どうやら俺は独りでニヤケとったみたいで。
      いつの間にか後ろに来た心夜がそう言った。
      

      「ありがとさん」


      俺は心夜の耳元で、そう囁いた。
      誰にも聞かれへんよーにって、一応の配慮。
      心夜の呆れた顔が、目に入った。


      首元を押さえて真っ赤な顔の
      そのまんまパタパタと部屋を出て行った。
      少しだけ静かになった空間に漂う空気。 
      別に、良い子ちゃんでおったつもりはあらへんから。


      あんたが俺んこと好きなんは一目瞭然。
      それに気付かれんほど阿呆やない。
      相手の気持ちが解れへんでなして好きってゆえる?
      なんて、ベタ惚れしとるからゆえることかもしらん。


      俺の腕の中で飛び回る鳥。
      籠が嫌いなあんたやから。
      

      鎖で繋いだまんま、自由を魅せてあげる。





















      BE HAPPY・・・?

      ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

      結局は嫉妬してるじゃん・・・的な?<意味不明
      因みに、タイトルは【鎖で繋がれた君】という意味です。
      篭を嫌うペットを、あなたならどうやって繋ぎとめますか?

      相互リンク御礼の御礼で咲結華さんに捧げます。
      これからもどうぞよろしくお願いしますvV


      20050812  未邑拝







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